皮膚科の豆知識ブログ

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足白癬の予防法

白癬菌はどこにいて、どうやって感染するかを聞かれることも多いと思います。

皮膚に付着した白癬菌は、一定の湿度(85%以上)があれば24時間かけて皮膚内に侵入し、感染が成立します。

水虫が足の指の間にできやすいのは、湿度が高いことが理由です。

 

それでは白癬菌は日常生活の中でどのような場所に生息しているのでしょうか。

日本皮膚科学会雑誌109(13) 2137, 1999

白癬患者の家の中の菌量(コロニー数)

・床:45
・畳:48
・バスマット:329

 

湿気を好む白癬菌が特に多く存在するのはバスマットのようです。

バスマットの共用は避けたほうがいいでしょう。

 

また付着した菌を除去するためにはどうしたらよいでしょうか。

Mycoses 43(1-2), 45, 2000

白癬菌の除去率

・タオルでふく:77%
・石鹸で洗う:97%
・1時間乾燥させる:100%

 

石鹸で洗えばほとんどの菌が除去されます。

1日1回しっかり足の指の間を洗っていれば大丈夫でしょう。

 

また一番効果があるのは1時間裸足で乾燥させること。

足の湿度を下げるためにも、一定時間は裸足でいることも有効です。

 

足白癬の治療はいつまで続けるのか?

白癬にはどれくらいの治療期間が必要なのでしょうか。

ゼフナートクリームの臨床試験の論文を紹介します。

体部白癬患者61人と足白癬患者137人がゼフナートクリーム外用(1日1回)で治療されました。

西日本皮膚科 55(4):759, 1993 NAID: 130004830924

【症状が改善した患者の割合(体部白癬)】

・2週間:97%
・4週間:100%

 

体部白癬では2週間程度で症状が改善しています。

それでは足白癬ではどうでしょうか。

【症状が改善した患者の割合(足白癬)】

・2週間:60%
・4週間:84%
・6週間:97%

 

足白癬は体部白癬と比較して症状の改善が遅いようです。

足は角質が厚いので外用薬の効果が低いと考えられます。

そのぶん長く治療を続ける必要があるでしょう。

 

さらに足白癬では皮膚症状が治癒した後も1か月程度は外用を続けることが推奨されています。

日本皮膚科学会の皮膚真菌症診療ガイドラインでは外用期間の目安は2~3か月です。

 

足白癬の内服抗真菌薬はどれを選ぶか?

足白癬に対して保険適応がある内服抗真菌薬には、テルビナフィン(ラミシール)とイトラコナゾール(イトリゾール)の2種類があります。

 

  • テルビナフィン(ラミシール)
  • イトラコナゾール(イトリゾール)

 

どちらを選択すればよいのでしょうか。

まず両者の効果を比較した4本の論文のシステマティック・レビューでは、テルビナフィンとイトラコナゾールの間に有意な差はみられていません。

Cochrane Database Syst Rev. 10(10): CD003584, 2012 PMID: 23076898

 

そのためどちらを選んでも大きな差はなさそうです。

ただしテルビナフィンには併用禁忌薬はありませんが、イトラコナゾールには多数の併用禁忌薬があります。

そのためテルビナフィンのほうが使いやすい印象があります。

 

さらにイトラコナゾールの後発品には、先発品と比べて吸収率が悪く血中濃度が低いものがあるようです。

新薬と臨床 54(11): 1408, 2005

血中濃度(Cmax)の比較

  • 先発品:100%
  • 後発品A:25.3%
  • 後発品B:74.0%
  • 後発品C:55.1%
  • 後発品D:8.1%
  • 後発品E:58.8%
  • 後発品G:80.1%

 

以上よりテルビナフィンを選択するほうがよい気がしています。

 

小児の内服抗真菌薬の投与量

小児の皮膚真菌症に対して内服抗真菌薬が必要になることがあります。

それは頭部白癬の治療のときです。

ところが投与量は日本のガイドラインには記載がなく、論文を参考に決める必要があります。

 

ある論文(臨床皮膚科. 64(13): 1060, 2010)ではテルビナフィン3.5~4.5mg/kg/日とされています。

しかし計算が面倒な上、端数が出るので、こちらの論文を参考にするのが簡便です。

小児科診療82(11): 1455, 2019

小児のテルビナフィン投与量

・体重<30kg:62.5mg(1/2錠)
・体重≧30kg:125mg(1錠)

 

投与期間は4~8週が推奨されているようです。

 

皮膚真菌症に内服抗真菌薬を使うシチュエーションは?

抗真菌薬内服が必要な白癬は爪白癬が代表的です。

真菌は爪の下にいますが、外用薬が爪を通過できないからです。

 

しかし内服薬は、その他の白癬にも適応があります。

ガイドラインから内服薬の適応をみてみましょう。

皮膚真菌症診療ガイドライン 2019

 【内服抗真菌薬の適応】

①爪白癬
②広範囲の体部白癬
③頭部白癬
④角化型足白癬
⑤接触皮膚炎を合併した足白癬

 

まず②範囲が広く外用が難しい重症の体部白癬は内服薬の適応になります。

 

また③頭部白癬や④角化型足白癬は外用の効果が乏しいことが知られており、内服薬を使用します。

 

さらに通常の足白癬でも、⑤接触皮膚炎を合併している場合は外用薬が使えません。

この場合はステロイド外用と抗真菌薬内服を組み合わせる治療選択肢があります。

 

外用一辺倒ではなく、内服も使いこなすのが専門医の白癬治療です。