この度、医学書院様より本を出版しました。
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この度、医学書院様より本を出版しました。
この本は様々な書籍、教科書から影響を受けて制作されています。
このブログではこれらの本を紹介しながら、私の著書の内容を解説したいと思います。
今回執筆にあたって「対話形式」を導入したいと考えていました。
そのアイデアのもととなったのは、ベストセラーの自己啓発本「嫌われる勇気」です。
「嫌われる勇気」はフロイト、ユングと並ぶ心理学界の巨匠アドラーの思想を解説した書籍です。
この本の特徴は哲人と青年の2人の対話形式で書かれていること。
アドラーの思想は心理学というよりは哲学に近く、難解なことで知られています。
しかし「嫌われる勇気」では対話形式がうまく使われていて、読みやすく理解を深めることができました。
とっつきにくい理論を小説やマンガ形式で解説する書籍は数多く出版されています。
この本もそんな流行りに乗った一冊かと思っていましたが、どうやらそれは違うようです。
古来、哲学の分野では対話型の書物(対話篇)が多く書かれています。
たとえば古代ギリシャの哲学者プラトンの哲学書はほとんどが対話篇です。
そして「嫌われる勇気」はプラトンの対話編を意識して書かれているそうです。
哲学に対する様々な疑問に対して、対話の中で議論を深めていく。それはソクラテス以来の哲学の伝統なのです。
そこで私も皮膚科診断に関する議論を深めるべく、書籍に対話形式を取り入れることにしました。
とはいえ医学書に目を向けてみると、指導医と研修医(や学生)との対話形式のものはすでに数多く出版されています。
症例をもとに診断の具体的な考え方や、つまずきやすいポイントなどが解説されており、わかりやすいのが特徴です。
しかし皮膚科診断の教科書は「見た目一発診断」を謳い解説が薄いものがほとんど。
対話形式のものは限られています。
そんな中で皮膚科の対話篇には価値があるはずです。
ですが対話だけでは情報量が少なくなってしまう欠点もあります。
そのため全部ではなく、各項目の導入部と、症例問題の解説だけに対話形式を採用することにしました。
しかし実際に書いてみると、対話形式の文章はとても難しい。
私はフィクションを書いたことがないため会話のバリエーションが乏しく、不自然なやりとりになってしまいます。
また対話篇の重要なポイントは、読者の疑問を代弁した登場人物が的確な質問、指摘を行うことです。
それによって読者も一緒に考えていく形になり、自分の問題として読むことができます。
ですが私の本では対話形式が効果的に機能してない部分も目立ちます。
もっと研修医や他科の先生方のリアルな声を反映できれば、より良いものになったのではないかと思います。
これは第2版(…!)への課題ですね。
しかしほとんどの医学書が増刷もかからず絶版になるそうです。
是非手にとっていただき、感想やご意見をいただけましたら嬉しいです。
皆様のご意見を取り入れて、より完成度の高い対話を掲載した第2版の出版を目指したいと思っています。
本の感想、ご意見はこちらからお願いします。
この度、医学書院様より本を出版しました。
この本は様々な書籍、教科書から影響を受けて制作されています。
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今回執筆するのに一番苦労したのが第3章の「中毒疹」の項目でした。
そのときにとても役立ったのが「不明熱・不明炎症レジデントマニュアル」です。
「レジデントマニュアル」シリーズは辞書的に使うマニュアル本です。
ところが「不明熱・不明炎症レジデントマニュアル」は趣が異なっています。
不明熱診療の根底にある思考回路や考え方が丁寧に解説されているのです。
つまりマニュアルでありながら通読型でもある、従来の枠に捉われない新しいタイプの教科書になっています。
一般的な不明熱の教科書には原因となりうる疾患が列挙されています。
そのため「原因疾患を鑑別すること」が重要だと思いがちです。
ところがこの本にはこう書かれています。
今みているものが不明熱だと認識することで、混沌とした状況が明瞭化する感覚を持てるようになること。これが不明熱の診療の第一歩である。
つまり原因疾患を鑑別する前に、「その病態が不明熱だと認識すること」自体に意味があるというのです。
一旦不明熱という枠組みに入れてから鑑別を絞っていく。
そうすれば仮に診断を間違ったとしても、迷走することなく鑑別を考え直すことができます。
暫定的に不明熱という枠組みへ分類し、そこから鑑別を絞っていく。
もし違ったとしても、再び不明熱という枠組みに戻れば迷走することはありません。
中毒疹の原稿をまとめる上でこの考え方は非常に有用でした。
皮膚科医は、見た目では鑑別ができない内因性の皮疹を診ることが頻繁にあります。
それらをまとめたゴミ箱診断が中毒疹です。
中毒疹はとても便利な病名で、全身に生じた皮疹を目の前にしたとき、その原因にかかわらず付けることができます。
ですが多くの皮膚科医がこの用語を使うべきではないと言います。
その理由は、病名がついたことで安心してしまい、それ以上の原因追求がおろそかになる危険性があるからです。
しかし不明熱と同様に「その皮疹が中毒疹だと認識すること」自体に意味があるはずです。
まず中毒疹という枠組みへ分類し、そこから鑑別を絞っていく。
もし診断が違ったとしても、再び中毒疹という枠組みに戻れば迷走することはありません。
そこで私の著書では中毒疹という用語を積極的に使用しました。
以上のようなことを著書の中に書きたかったのですが、字数やレイアウトの関係で十分に入れられず、ブログで補完させていただきました。
是非手に取っていただき、感想やご意見をいただけましたら嬉しいです。
つづく
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今回執筆するにあたり、皮膚科診断のフローチャートを作りたいという気持ちがありました。
そのアイデアのもととなったのは「内科診療フローチャート」です。
診断や治療など、疾患の知識を個々に学んでも、「実臨床ではどうなのか?」という具体的なイメージはなかなかつかめなかったりします。
「内科診療フローチャート」のウリはその名の通りフローチャート。
疾患ごとにフローチャートが掲載されていて、診断から治療まで診療の一連の流れが一目でわかるように工夫されています。
そのため「どう動いたら良いのか」が理解しやすく、即実践で使える教科書になっています。
ところが皮膚科の診断は視覚情報に頼る部分が多く、パターン認識になりがちです。
そのため診療の流れが示された教科書はほとんどありません。
そこで「誰も教えてくれなかった皮疹の診かた・考えかた」では、診療の流れがわかるようにフローチャートを作成しました。
細かい皮疹の形状ではなく、具体的な情報から診断を絞れるように工夫したつもりです。
また「内科診療フローチャート」が優れている点はフローチャートだけではありません。
解説文にはその背景となる膨大なエビデンスが引用論文とともに記載されています。
フローチャートを見て大まかな診療の流れが認識できて、さらに対応した本文の記載を確認することでより深く理解することができるのです。
ただ私の著書ではフローチャートの背景となるエビデンスについては十分な記載ができませんでした。
可能な範囲で参考文献を充実させたつもりですが、ここは反省点です。
診療のエビデンスについては2冊目以降(…!!)の課題とさせていただきます。
是非手に取っていただき、感想やご意見をいただけましたら嬉しいです。
つづく
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この本は様々な書籍、教科書から影響を受けて制作されています。
このブログではこれらの本を紹介しながら、私の著書の内容を解説したいと思います。
私が通読型の教科書を執筆しようと考えた際、まず思い浮かんだのが「極論で語る神経内科」でした。
「極論で語るシリーズ」はイラストや4コマ漫画がふんだんに散りばめられた、くだけた感じの教科書です。
その中でも「極論で語る神経内科」は特に優れていて、通常の教科書でフォローしきれないような経験に基づく専門医の考え方が存分に語られています。
第一版のあとがきから引用させていただきます。
この本は私の個人的な「神経内科に関してこんなことを考えて診療している」という放言ですべてが構成されています。
マニュアルでもなければテキストでもありません。現代の中堅の神経内科医が何を考えて日々仕事しているのかが詰まっています。
マニュアルでもなければテキストでもない。
まさにマニュアルと成書の間を埋める教科書になっています。
実際、「脊髄疾患で重要なのは放射線科に緊急性を説明するスキル」など、成書やマニュアルには書かれていない治療のコツが述べられ、疾患のイメージがありありと伝わってきます。
神経疾患を診ることがないに私にとっても非常に面白く、一気に読み切ってしまいました。
中には皮膚科診療にも応用できそうなTipsもあり、長年の経験から得られた診療のエッセンスは他の分野にも応用が利くようです。
「極論で語るシリーズ」のコンセプトについて、担当編集者様が書かれた文章があります。
一部だけ引用させていただきます。
「肩ひじをはらず、自由に先生のいわんとされたい臨床の真髄を語ってもらいたい」
「教科書じゃありませんから、網羅性は除外です」
「先生の中で、モノ申したい臨床のテーマをピックアップしてもらって、ものすごく偏ったテーマでもいいですし」
これがまさに私の書きたい教科書でした。
残念ながら皮膚科の分野では、そのような本はあまり多くありません。
私の力不足から「極論で語る神経内科」には遠く及びませんでしたが、網羅性は除外して、ものすごく偏った臨床の真髄を語ったつもりです。
(出版社様からは、あまり偏りすぎず網羅性を持たせてほしいと言われましたが)
また4コマ漫画はありませんが、「極論で語る神経内科」を参考にしてイラストをふんだんに散りばめました。
是非手に取っていただき、感想やご意見をいただけましたら嬉しいです。
つづく
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