皮膚科の豆知識ブログ

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【書籍の復習用】国試解説:第4回

前回に引き続き書籍の内容をもとにして国家試験の問題を解説していきます。

 

今回は第2章の内容になります。

 

【問題】

以下の皮疹が真菌検査陰性でステロイド外用を行っても治癒しない場合、何を行えばよいでしょうか。

(102-A34)

国試問題文(抜粋)

71歳の男性.数年前に出現した顔面の紅色皮疹が拡大してきたことを主訴に来院した.

 

【解説】

答え:悪性腫瘍を疑って皮膚生検

 

表面の変化がある紅斑なので、病変は表皮にあると分かります。

その場合に考える疾患は皮膚真菌症、湿疹、悪性腫瘍です。

 

真菌検査が陰性であれば、湿疹と悪性腫瘍の可能性があります。

ただし悪性腫瘍の頻度は低いため、まず湿疹として治療を行うのがよいでしょう。

 

そしてステロイド外用で治らない場合は、皮膚生検を行って診断を確定する必要があります。

湿疹と見分けがつきづらい悪性腫瘍には、日光角化症、Bowen病、乳房外Paget病、菌状息肉症などがあります。

この症例は高齢者の露光部であり日光角化症の可能性が高そうです。

つづく

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【書籍の復習用】国試解説:第3回

前回に引き続き書籍の内容をもとにして国家試験の問題を解説していきます。

 

今回は第2章の内容になります。

 

問題

以下の皮疹をみたときに、まず何を行えばよいでしょう。

(112D-33)

国試問題文(抜粋)

8歳の男児.2ヵ月前から頭皮に痒みとともに脱毛斑が出現した.市販の副腎皮質ステロイド外用薬を塗布していたところ,2週間前から次第に発赤し,膿疱や痂皮を伴い疼痛も出現してきたため受診した.

 

解答

答え:真菌検査

 

表面の変化がある紅斑なので、病変は表皮にあると分かります。

この場合、まず考えるのは湿疹と白癬です。

湿疹と白癬の鑑別は真菌検査(直接鏡検)で行うことができます。

 

 

この症例は脱毛斑を伴っているので白癬の可能性が高そうですが、真菌検査なしで診断することはできません。

検査陽性を確認してから抗真菌薬で治療を行います。

つづく

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【書籍の復習用】国試解説:第2回

前回に引き続き書籍の内容をもとにして国家試験の問題を解説していきます。

 

今回は第2章の内容になります。

 

問題

以下のような皮疹をみたとき、まず何をすればよいでしょうか。

(110-C24)

国試問題文(抜粋)

52歳の女性.頭皮と両耳介の皮疹とを主訴に来院した.数日前に染毛剤を使用した.同時期にシャンプーも変更したという.

 

解説

答え:真菌検査

 

表面の変化がある紅斑なので、病変は表皮にあると分かります。

この場合、まず考えるのは湿疹と白癬です。

湿疹と白癬の鑑別は真菌検査(直接鏡検)で行うことができます。

 

真菌検査が陰性であれば、湿疹と考えてステロイドの外用を行います。

 

ただ一言で湿疹と言っても単一の疾患ではなく、分類される疾患は多岐にわたります。

 

  • 原因物質がわかる→接触皮膚炎
  • 原因物質が不明→病因、部位、年齢、特徴的な臨床像から分類

 

この皮疹は耳に限局しているので、接触皮膚炎を疑いますね。

ピアスなどの金属や、外用薬を使用していた既往がないかを確認するのがよいでしょう。

つづく

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【書籍の復習用】国試解説:第1回

この度、医学書院様より本を出版しました。

 

書籍を購入してくださった方に向けて、Twitterで書籍の内容をもとにした国家試験の解説を行いました。

今回、改めてブログにまとめたいと思います。

 

問題

次の3つの紅斑を見たとき、まず何を考えればよいでしょうか。

解説

答え:表面の性状に注目する

 

紅斑を見たとき、まず注目するのは表面の性状です。

表面がザラザラしている場合は病変が表皮にあり、ツルツルしている場合は病変が表皮にはなく真皮以下に存在しています。

ツルツルしている場合は、さらにその深さによって見え方が変わります。

真皮の場合は境界明瞭で、皮下組織の場合は境界不明瞭です。

このように紅斑は3つに分類することができます。

 

問題の3つの皮疹は

A:表面ザラザラ(湿疹)

B:表面ツルツル+境界明瞭(蕁麻疹)

C:表面ツルツル+境界不明瞭(結節性紅斑)

となります。

このように皮疹の表面に注目することで、見た目一発診断ではなく論理的に診断を行うことができるのです。

つづく

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次回作の構想

次回作の構想メモ

 

前著の続編(同じコンセプト)の要望がある。

しかし次回作はまったく違ったスタイルの書籍にしたい。

 

具体的にはマニュアル本。

医学書は成書、マニュアル、通読型の3種類に分類される。

前著は読み物的な「通読型」だったので、次回は別のカテゴリーである「マニュアル」に挑戦する。

 

現在の皮膚科のマニュアル本の問題点。

 

  1. 病名がわからないから、どこを調べてよいかわからない
  2. 無機質でどれを見ても代わり映えしない
  3. なぜそうするのかという根拠の記載がない

 

①への対応

・体系的に診断が可能な「アルゴリズム」をもとにして書籍を構成する

(皮膚病理にはアッカーマンアルゴリズムがあるが、皮疹のアルゴリズム診断は一般的ではない)

 

②に対する対応

・分担執筆ではなく単著

・臨床経験にもとづく有用な情報やノウハウ、ピットフォールを盛り込む

・味気ない言葉の羅列ではなく、疾患の全体像がイメージできるように工夫

 

③に対する対応

・抽象的な記載を避け、具体的な数値やエビデンスを記載

・エビデンスがはっきりしない部分では、自身の臨床経験を交えて解説

 

 

他科には単著の優れたマニュアル本が存在するが、皮膚科の分野にはない。

 

  • 内科診療フローチャート
  • 内科診断リファレンス
  • 循環器病治療薬ファイル
  • 膠原病診療ノート

 

これらを参考にして、著者一人による一貫したものの診かたを提示。

考えの過程や根拠などの従来のマニュアルでは省かれている「行間」を書く。

 

またエビデンスにとどまらず、実際の経験や現場の知識をなるべく具体的に示し、病気の全体像をイメージできるように工夫する。