皮膚科専門医の勉強ブログ

日々の勉強の記録

はじめに

このブログは皮膚科専門医が、日々感じた小さな疑問を解決する論文を紹介するブログです。 皮膚疾患は種類が多く大規模スタディーが行われていないため、明確なエビデンスがある検査や治療は少ないようです。 そのため皮膚科診療は経験に頼りがちになります…

薬疹の原因薬剤は何が多いか?

薬疹の原因薬剤はどのようなものが多いのでしょうか。 日皮アレルギー会誌 7(3): 115, 1999 【薬疹の原因薬剤】 1. 抗菌薬:41.9%2. 消炎鎮痛薬:13.0%3. 循環器用薬:11.7%4. 抗てんかん薬:10.1% この報告によると抗菌薬や鎮痛薬が原因になることが多いよ…

薬疹の病型は何が多い?

薬疹には色々なパターンがあります。 それではどのような病型が多いのでしょうか。 薬疹の病型を調べた報告を紹介します。 日皮会誌 122(10): 2495, 2012 【薬疹の病型の頻度】 ・紅斑丘疹型:41%・多形紅斑型:13%・湿疹型:8%・蕁麻疹型:8%・重症薬疹:7%…

薬疹の治療法

重症薬疹の治療法は教科書に書かれていますし、ガイドラインも存在します。 しかしそれ以外の薬疹をどうすればよいのかは、あまり書かれていない気がします。 そこで薬疹の総説から、治療法の部分を抜粋してみます。 N Engl J Med 366: 2492, 2012 【薬疹の…

ASOはどんなときに使うのか?

溶連菌感染症を診断するための血液検査としてASOがあります。 ASOはどのような場面で使用するのでしょうか。 A群溶連菌が産生する活性蛋白streptolysin Oに対するIgG抗体がASO(anti-streptolysin O)です。 IgG抗体なので上昇するまでの時間がかかることに…

マイコプラズマ抗体検査はどう使う?

マイコプラズマ(マイコプラズマ・ニューモニエ)感染症はスティーブンスジョンソン症候群の原因にもなるため、皮膚科でも重要な感染症です。 肺炎のイメージが強いですが、肺炎に至るのは3~10%で、ほとんどが感冒症状のみなのだそうです(Chest. 95(3) 639…

抗核抗体が陽性だけど症状がないとき

抗核抗体が陽性、しかし臨床症状は無いという状況に遭遇することがあります。 健常者での抗核抗体の陽性率はどれくらいなのでしょうか。 Arthritis Rheum. 40(9): 1601, 1997(PMID: 9324014) 【健常者の抗核抗体陽性率】 40倍:31.7% 80倍:13.3% 160倍…

成人スティル病でフェリチンはどれくらい有用なのか?

成人スティル病ではフェリチンが上昇することが知られていますが、どれくらい有用なのでしょうか。 フェリチンの感度・特異度について書かれた総論を紹介します。 日本内科学会雑誌 92(10): 1977, 2003 ・フェリチン高値 ⇒ 感度91.9%、特異度47.0% フェリチ…

IL-2Rは悪性リンパ腫の診断に有用なのか?

IL-2レセプター(IL-2R)は悪性リンパ腫の腫瘍マーカーとして使用されています。 しかし様々な疾患で上昇するため、どの程度有用な検査なのかは知られていないように思います。 皮膚悪性リンパ腫を疑ってスクリーニング検査を行ったときにIL-2Rが高値に出る…

TARCでアトピーの重症度がわかるか?

アトピー性皮膚炎の病勢を測る指標としてTARCがあります。 しかし測定値が100~30000 pg/mlと非常に幅があるため、目安が分かりにくいです。 数値の目安として、重症度ごとの平均値を調べた報告が参考になります。 J Dermatol 33(4): 300, 2006(PMID: 16674…

抗BP180抗体の陽性率はどれくらい?

高齢者に多い水疱性類天疱瘡(類天疱瘡)は、高齢化に伴い増加しています。 高齢者施設では、入所者の1%に類天疱瘡がみられるという報告もあります(MB derma: 161 p39-45, 2010.)。 診断基準では皮膚生検が必要なのですが、皮膚科受診が難しい場合もあり、…

ペニシリンアレルギーにセフェムは投与できるのか?

ペニシリンアレルギーを持つ患者がいます。 その患者にセフェム系の抗菌薬を投与することは可能なのでしょうか。 これを調べた報告があります。 J Allergy Clin Immunol Pract. 6(5): 1662, 2018(PMID: 29408440) ペニシリンアレルギーと診断されている272…

アレルギー検査を行う時期はいつがいい?

アレルギーの原因を調べるために検査が行われることがあります。 ・即時型→プリックテスト、皮内テスト・遅延型→DLST、パッチテスト それではこれらの検査はいつ頃行うのがよいのでしょうか。 まず即時型アレルギーについて。 検査時期について書かれた総説…

アレルギー検査(遅延型)の陽性率はどれくらい?

遅延型アレルギーの原因を特定するための検査として「DLST」と「パッチテスト」があります。 それではこれらの陽性率はどれくらいなのでしょうか。総説から引用してみます。 治療 89(12): 3281, 2007 【薬疹検査の陽性率】 ・DLST陽性率:40-60%・パッチテス…

アレルギー検査(即時型)の陽性率はどれくらい?

即時型アレルギーの検査として皮膚テスト(プリックテスト、皮内テスト)が行われます。 しかしアレルギーを強く疑いながらも検査が陰性になる場合もあり、判断に迷うケースが多いです。 それでは皮膚テストの陽性率はどれくらいなのでしょうか。 具体的な数…

造影剤アレルギーはアナフィラキシーだけではない

アレルギーには即時型と遅延型の2種類があることは、誰もが知っていると思います。 ところが造影剤アレルギーの相談を受けてみると、即時型と遅延型が区別されていないことが多いと感じます。 「造影剤アレルギー=アナフィラキシー」と考えているが人が多い…

本当の局麻アレルギーは少ない?

局所麻酔薬に対するアレルギーの既往がある患者は多いですが、はたしてそれは本当にアレルギーなのでしょうか。 局麻アレルギーの既往がある患者に皮膚テストを行った研究があります。 アレルギー 58(6): 657, 2009 20人の患者に対してプリックテストと皮内…

魚摂取後のアレルギーは魚アレルギーなのか?

魚を食べた後に蕁麻疹が出現する患者さんがいます。 これは魚アレルギーと思われがちですが、原因は他にも2つ考える必要があります。 魚を食べた後の蕁麻疹の原因 1. 魚アレルギー2. アニサキスアレルギー3. アレルギー様の食中毒(ヒスタミン) 魚摂取後の…

ハチに刺されたら何%くらいアレルギーが出る?

ハチに刺された場合2回目が危険と言われますが、実際にアレルギーを起こす可能性はどれくらいあるのでしょうか。 ハチ刺症の総論から引用してみます。 アレルギー 67(2): 89, 2018 まず初めて刺された後、IgEが陽性化するのが20~30%です。 ハチ刺傷↓ハチIgE…

傷の治癒を促進する方法

傷の洗浄は一般的に行われていますが、周囲の皮膚に関してはあまり意識されていないことが多いように思います。 今回は傷の周囲の皮膚に関する論文を紹介します。 J Wound Care. 14(4): 169, 2005 褥瘡に対して周囲の皮膚を生食のみで洗浄した群と、石鹸を使…

外傷に抗菌薬は必要か?

以前、手術後の予防的抗菌薬の効果は証明されていないという論文を紹介しました。 それでは外傷の場合はどうでしょうか。 汚染のない外傷で抗菌薬の効果を調べたメタアナリシスを紹介します。 Am J Emerg Med 13(4): 396, 1995 【創部感染発症率】 ・予防抗…

傷の培養検査で気をつけること

「傷を見たら培養をしろ」昔はそんなふうに習ったことがあるような気がします。 創部の培養はよく行われていますが注意が必要です。 傷が感染を起こしているのかは、創部培養で分かるのでしょうか。 非感染創の培養を行った研究があります。 Med J Malaysia.…

熱傷は何分間冷やせばいいのか?

熱傷は冷やすことで、最終的な組織損傷を減らすことができます(Burns Incl Therm Inj. 9(1): 1, 1982) 。 しかしどれくらいの時間冷やしたらよいのかは実はわかっていないようです。 そこでいくつかのサイトから冷却時間についての記載をまとめてみました。…

熱傷の水疱をどうするか?

熱傷の水疱をどう扱うかは意見が分かれています。 水疱は温存するほうがいいという意見と、水疱は感染源になるので除去したほうがいいという意見です。 今回は水疱内容物についての論文を紹介します。 水疱の中の水分をそのままにした群と、穿刺して水分だけ…

熱傷はいつ手術時期するのか?

熱傷の手術については、あまり習うことがない気がします。 深達度によってⅠ~Ⅲ度に分類されていますが、受傷直後に正確に診断するのは困難です。 壊死組織が分界され範囲がはっきりするのは受傷後10日~2週間後になります。 この2週間が基準になり、早期手術と…

真皮縫合を行う理由は?

皮膚科、形成外科では真皮縫合がよく行われます。 真皮縫合にはどのような利点があるのでしょうか。 術後瘢痕に対する真皮縫合の効果を調べた報告があります。 Br J Plast Surg. 42(1): 74, 1989 【瘢痕の幅(皮膚切除術後半年)】 ・真皮縫合なし:4.82mm・…

合成吸収糸の種類と違い

手術の時に使用する吸収糸にはいろいろな種類があります。 しかしそれぞれの特徴について解説してある教科書は少ないため、張力維持期間についてまとめてみました。 (張力維持期間以外にも、モノフィラメントか撚糸かという違いもあります) 【張力維持期間…

術後瘢痕を予防する方法

術後に肥厚性瘢痕を予防する方法としてテープ固定が行われています。 はてしてテープ固定にエビデンスはあるのでしょうか。 動物の傷で術後瘢痕の程度を調べた報告を紹介します(Arch Facial Plast Surg. 14(1): 45, 2012)。 まず無処置の傷とテープ固定し…

局所麻酔薬の使い分け

日常的に頻用している局所麻酔薬ですが、それぞれどのような差があるのでしょうか。 麻酔薬の総説から引用してみます(PEPARS 127: p1, 2017)。 まず麻酔薬の強さに関わるのが分配係数です。 分配係数(脂溶性)が高いほど、細胞膜の透過性が高く、効果が強…

エピネフリン入り局所麻酔の効果

皮膚科の手術ではエピネフリン入りの局所麻酔を使用します。 エピネフリンには血管収縮作用があり、2つの効果があると言われています。 ①麻酔薬の吸収が緩徐になるため作用時間と極量が増える ②術中の出血を減らす これにはエビデンスがあるのでしょうか。 …