皮膚科の豆知識ブログ

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細菌感染症

蜂窩織炎と丹毒の鑑別は必要なのか?

深在性の皮膚細菌感染症は、病変の深さによって蜂窩織炎と丹毒に分類されています。 真皮浅層:丹毒 真皮深層~皮下組織:蜂窩織炎 皮膚の深い部位に炎症がある蜂窩織炎では紅斑の境界が不明瞭ですが、浅い部位の丹毒では境界がはっきりしている点が鑑別点と…

血液検査や培養検査で蜂窩織炎を診断できる?

蜂窩織炎の診断は基本的に臨床症状から行われます。 それでは検査はどれくらい有用なのでしょうか。 血液検査 まず血液検査について見てみましょう。 白血球、CRPは感染症の指標として広く使用されていて、初診時のスクリーニングとしてルーチンで行われてい…

蜂窩織炎を誤診しないための方法

前回の記事で蜂窩織炎の診断を確定できる検査はないことを解説しました。 www.derma-derma.net そのため非特異的な臨床所見のみから診断するしかありません。 それでは蜂窩織炎の診断はどれくらい難しいのでしょうか。 論文を見てみましょう。 Dermatol Onli…

蜂窩織炎に膿瘍を合併する頻度はどれくらい?

蜂窩織炎はまれに膿瘍を合併することがあります。 その場合は切開排膿が必要になるため、膿瘍の有無を確認しておくことは重要です。 それでは膿瘍を合併する頻度はどれくらいなのでしょうか。 論文を見てみましょう。 Arch Intern Med. 164(15): 1669, 2004 …

蜂窩織炎の再発率はどれくらい?

蜂窩織炎は再発することが多いと感じます。 実際、再発率はどれくらいなのでしょうか。 蜂窩織炎の総論を見てみましょう。 JAMA. 316(3): 325, 2016 PMID: 27434444 蜂窩織炎の再発率 ・1年以内:14%・3年以内:45% このように半数近くが3年以内に再発するよ…

蜂窩織炎の治療は内服薬と注射薬どちらを選ぶ?

蜂窩織炎は抗菌薬で治療を行います。 それでは内服薬と注射薬のどちらを使用したらよいのでしょうか。 論文を見てみましょう。 J Antimicrob Chemother. 70(2): 581, 2015 PMID: 25336165 合併症のない蜂窩織炎患者に対して、24人に対して内服薬(セファレキ…

蜂窩織炎に使う内服抗菌薬はどれがいい?

蜂窩織炎にはどのような抗菌薬を使用したらいいのでしょうか。 感染症の治療では、培養検査を行い原因菌に感受性のある抗菌薬を使用するのが一般的です。 ところが蜂窩織炎では培養で菌を分離できず、起炎菌がわからないことが多いことが問題です。 そのため…

第1世代セファロスポリンを使わない蜂窩織炎

前回の記事では、蜂窩織炎に対しては第1世代のセファロスポリン系抗菌薬を使用すると解説しました。 www.derma-derma.net それでは、それ以外の抗菌薬を選択するのはどんな状況なのでしょうか。 海外のガイドラインを見てみてみましょう。 動物・ヒト咬傷 動…

蜂窩織炎の抗菌薬は添付文書通りでいいですか?

添付文書に記載されている抗菌薬の用量は、海外と比較して少なく設定されています。 そのため蜂窩織炎に対して抗菌薬の効果が乏しい場合、投与量が少ないことが原因の可能性もあります。 米国感染症学会(IDSA)のガイドラインの推奨量と添付文書の常用量を…

蜂窩織炎の治療効果判定の時期は?

蜂窩織炎に対して抗菌薬を開始した後、効果判定はいつごろ行ったらよいのでしょうか。 英国のガイドラインを見てみましょう。 NICEのガイドラインでは、治療の効果判定は48時間後に行うことが推奨されています。 The use of intravenous antibiotics should …

蜂窩織炎の治療期間はどれくらい?

蜂窩織炎の治療期間は「皮疹が消えるまで」と習った気がします。 しかし実際には抗菌薬はどれくらいの期間投与したらよいのでしょうか。 海外のガイドラインを見てみましょう。 米国感染症学会(IDSA)ガイドライン 英国国立医療技術評価機構(NICE)ガイド…

膿痂疹は培養検査で診断できる?

「細菌培養が陽性なので膿痂疹と診断したが、抗菌薬が効かない」という相談を受けることがあります。 これは診断が間違っているパターンがほとんどです。 膿痂疹の診断は培養検査ではできないからです。 湿疹などのびらん面には、黄色ブドウ球菌をはじめとす…

膿痂疹に使う外用薬はどれがいい?

伝染性膿痂疹に対してどの外用抗菌薬を使用したらよいのでしょうか。 細菌培養の結果がわかるまで数日かかります。そのため抗菌薬の選択は過去の報告をもとに行う必要があります。 抗菌薬選択の参考として、伝染性膿痂疹の原因菌を見てみましょう。 皮膚科の…

膿痂疹に使う内服薬はどれがいい?

伝染性膿痂疹に対してどのような内服抗菌薬を使用したらよいのでしょうか。 細菌培養の結果がわかるまで数日かかります。そのため抗菌薬の選択は過去の報告をもとに行う必要があります。 抗菌薬選択の参考として伝染性膿痂疹の原因菌を見てみましょう。 皮膚…

「とびひ」と診断されたらプールに入れない?

とびひ(伝染性膿痂疹)は小児に多い疾患なので、保護者から学校やプールに関する質問を受けることがあります。 小児の感染症について、登校やプールに関してまとめてみます。 まず出席停止については法律(学校保健安全法)に定められています。 出席停止期…

膿瘍は穿刺吸引で治療できる?

膿瘍の治療の基本は切開排膿です。 しかし切開には時間がかかり、その後も処置が必要になってしまいます。 そのため外来が忙しい時は躊躇する場合もあります。 一方、穿刺吸引は短時間で終わり、その後の処置が必要ないのが長所です。 それでは穿刺吸引のみ…

膿瘍を切開したあとにガーゼは詰めたほうがいい?

膿瘍の治療の第一選択は切開排膿です。 切開を行って貯留していた膿を圧出した後は、ドレナージ用のガーゼを詰めるのが一般的です。 しかし本当にガーゼを詰める必要はるのでしょうか。 ガーゼパッキングの効果を調べた論文があります。 Acad Emerg Med. 16(…

膿瘍を切開したあとに抗菌薬は必要か?

膿瘍に対しては切開排膿を行い、その後抗菌薬を投与するのが一般的です。 しかし米国感染症学会のガイドラインでは、基本的に(発熱などの全身症状を伴う場合を除いて)抗菌薬は不要と記載されています。 Clin Infect Dis. 59(2): 147, 2014 PMID: 24947530 …