皮膚科の豆知識ブログ

日々の小さな疑問を解決する論文を紹介。講演、お仕事の依頼は「お問い合わせ」からお願いします。

保湿剤にはどんな効果がある?

皮膚科の治療では保湿剤が重要な役割を果たします。 それでは保湿剤には具体的にはどのような効果があるのでしょうか。 再燃予防効果 保湿剤は皮膚炎そのものに対する直接的な効果は期待できませんが、ドライスキンを改善することができます。 そのためドラ…

保湿剤は1日何回塗ればいい?

保湿剤は1日何回塗ればいいのでしょうか。 添付文書を見ても、使用回数は1日1~数回と記載されていてよくわかりません。 論文を見てみましょう。 日本皮膚科学会雑誌 122(1): 39, 2012 NAID: 130004708841 健常成人5人の前腕に人工的に乾燥皮膚を作り、1か所…

保湿剤は入浴後に塗った方がいい?

保湿剤は入浴後に塗るのがいいといわれています。 その理由は2つあるようです。 入浴後に皮膚の乾燥が進むのを予防 入浴で吸収した水分を閉じ込めるので保湿効果が高い まず入浴洗浄によって皮膚表面の皮脂が取れるため、そのまま放置しておくと皮膚の乾燥が…

ワセリン、ヒルドイド、尿素はどれがいい?

保険で処方できる保湿剤は3種類あります。 ワセリン(プロペト) ヘパリン類似物質(ヒルドイド) 尿素(ウレパール、パスタロンなど) これらはどのように使い分ければよいのでしょうか。 論文を見てみましょう。 日皮会誌 121(7): 1421, 2011 NAID: 100311…

ヒルドイドはクリームとローションどちらがいい?

保湿剤であるヒルドイドには様々な剤型があります。 これらはどのように使い分ければよいのでしょうか。 ローションとクリーム(ソフト軟膏)を比較した論文を紹介します。 日本皮膚科学会雑誌 122(1): 39, 2012 NAID: 130004708841 健常成人5人の前腕に人工…

尿素の濃度は何%がいいですか?

尿素製剤には2つの濃度があります。 ・ウレパール→10%・ケラチナミン→20%・パスタロン→10%と20% これらはどのように使い分ければよいのでしょうか。 論文を見てみましょう。 Dermatol Ther. 31(6): e12690, 2018 PMID: 30378232 尿素は角質細胞中の天然保…

保湿剤とステロイドはどちらを先に塗る?

保湿剤とステロイド外用薬を併用する状況は多いです。 そんなときに気になるのが「どちらを先に塗ればいいのか」。 先に保湿剤を塗ってしまうと、後で塗るステロイドの吸収率が低下するような気もします。 しかし保湿剤を後で塗ると、最初に塗ったステロイド…

もっと皮膚科診断を学びたい人のための本

私の著書の第4刷が発行されました。 多くの方にご購入いただき大変うれしいです。 www.derma-derma.net ですが「誰も教えてくれなかった皮疹の診かた・考えかた」を読んで物足りないと思った方や、もっと詳しく皮膚科診断を勉強したいと思った方もいるかもし…

「誰も教えてくれなかった皮疹の診かた・考えかた」の第4刷が発行されました

この度、私の著書「誰も教えてくれなかった皮疹の診かた・考えかた」の第4刷が発行されました。 購入してくださった皆様ありがとうございました。 誰も教えてくれなかった皮疹の診かた 第○刷というのは増刷された回数を表しています。 最初に印刷した本が売…

キズにゲンタシン軟膏を使うか?(油脂性基剤の選びかた)

潰瘍治療薬は剤型によって3つに分類するとわかりやすくなります。 油脂性基剤(水を保つ) 水溶性基剤(水を減らす) 乳剤性基剤(水を増やす) 創部の水分の状態に応じて薬剤を使い分けるのが創傷治療の原則です。 剤型別に外用薬の使いわけを解説したいと…

ユーパスタ、カデックス、ヨードコートの違いと使い分け(水溶性基剤の選びかた)

潰瘍治療薬は剤型によって3つに分類するとわかりやすくなります。 油脂性基剤(水を保つ) 水溶性基剤(水を減らす) 乳剤性基剤(水を増やす) 創部の水分の状態に応じて薬剤を使い分けるのが創傷治療の原則です。 剤型別に外用薬の違いと使いわけを解説し…

ゲーベンとオルセノンの違い(乳剤性基剤の選びかた)

潰瘍治療薬は剤型によって3つに分類するとわかりやすくなります。 油脂性基剤(水を保つ) 水溶性基剤(水を減らす) 乳剤性基剤(水を増やす) 創部の水分の状態に応じて薬剤を使い分けるのが創傷治療の原則です。 剤型別に外用薬の使いわけを解説したいと…

【書籍の復習用】国試解説:第4回

前回に引き続き書籍の内容をもとにして国家試験の問題を解説していきます。 誰も教えてくれなかった皮疹の診かた 今回は第2章の内容になります。 【問題】 以下の皮疹が真菌検査陰性でステロイド外用を行っても治癒しない場合、何を行えばよいでしょうか。 …

【書籍の復習用】国試解説:第3回

前回に引き続き書籍の内容をもとにして国家試験の問題を解説していきます。 誰も教えてくれなかった皮疹の診かた 今回は第2章の内容になります。 問題 以下の皮疹をみたときに、まず何を行えばよいでしょう。 (112D-33) 国試問題文(抜粋) 8歳の男児.2ヵ…

【書籍の復習用】国試解説:第2回

前回に引き続き書籍の内容をもとにして国家試験の問題を解説していきます。 誰も教えてくれなかった皮疹の診かた 今回は第2章の内容になります。 問題 以下のような皮疹をみたとき、まず何をすればよいでしょうか。 (110-C24) 国試問題文(抜粋) 52歳の女…

【書籍の復習用】国試解説:第1回

この度、医学書院様より本を出版しました。 誰も教えてくれなかった皮疹の診かた 書籍を購入してくださった方に向けて、Twitterで書籍の内容をもとにした国家試験の解説を行いました。 今回、改めてブログにまとめたいと思います。 問題 次の3つの紅斑を見た…

次回作の構想

次回作の構想メモ 前著の続編(同じコンセプト)の要望がある。 しかし次回作はまったく違ったスタイルの書籍にしたい。 具体的にはマニュアル本。 医学書は成書、マニュアル、通読型の3種類に分類される。 前著は読み物的な「通読型」だったので、次回は別…

湿疹が治るまでどれくらいかかるのか?

湿疹が治るまでには、どれくらいの時間がかかるのでしょうか。 アトピー性皮膚炎の研究を見てみましょう。 外用免疫抑制剤(ピメクロリムス)の寛解維持効果を見た臨床試験ですが、まず寛解導入のために外用ステロイドが使用されています。 Dermatology. 222…

湿疹が治らないときに考えること

「湿疹が治らない」 これは皮膚科医であれば誰しも経験することだと思います。 また「治らない」という訴えでドクターショッピングを繰り返す患者もいます。 それでは湿疹が治らない時はどうすればよいのでしょうか。 まず治らない理由にどんなものがあるの…

湿疹患者の外用薬継続率はどれくらい?

外来診療を行っていると、外用薬をきちんと使用できていない患者が多い印象があります。 実際、薬を塗るのは大変で、続けれられなくても無理はありません。 それでは具体的に外用薬の継続率はどれくらいなのでしょうか。 論文を見てみましょう。 J Am Acad D…

湿疹に抗ヒスタミン薬は有効ですか?

皮膚の痒みは、ヒスタミンが神経に作用することで誘発されます。 そのため神経のヒスタミン受容体を阻害する抗ヒスタミン薬には、痒みを抑制する効果があります。 しかし湿疹の痒みを起こす物質はヒスタミンだけではありません(IL-4、IL-13などのサイトカイ…

湿疹に内服ステロイドを使う場面は?

症状が重篤な湿疹に対しては内服ステロイドを使うことがあります。 それでは具体的には、どのような場面で、どれくらいの量を使えばよいのでしょうか。 接触皮膚炎のガイドラインを見てみましょう。 日本皮膚科学会雑誌 130(4), 523, 2020 NAID: 13000783359…

小児のアトピー性皮膚炎はどれくらい治癒する?

「子どものアトピーは自然に治る」と言われますが、これは本当なのでしょうか。 論文を見てみましょう。 Br J Dermatol. 170(1): 130, 2014 PMID: 23980909 台湾で行われた、生後2歳までに発症したアトピー性皮膚炎の小児1404人の調査です。 10歳まで皮膚炎…

高齢者にアトピー性皮膚炎はあるのか?

従来、アトピー性皮膚炎は小児の疾患と考えられていました。 1970年代のデータを見ると、成人の割合は10%程度です。 【アトピー患者の年齢(1976年)】 ・9歳以下:68%・10~19歳:19%・20~29歳:7%・30歳以上:6% Asia Pac Allergy. 1(2): 64, 2011 しかし…

接触皮膚炎の原因物質は何が多い?

日常診療で接触皮膚炎に遭遇する頻度は高いですが、原因は何が多いのでしょうか。 日本接触皮膚炎研究班が行った疫学調査を見てみましょう。 日本皮膚科学会雑誌 130 (4), 523-567 NAID: 130007833597 パッチテストで原因が判明した接触皮膚炎423例のまとめ…

染毛剤の接触皮膚炎が起きるまでの期間

染毛剤の接触皮膚炎は比較的遭遇することが多い疾患です。 「今までは大丈夫だった」と言われることが多い印象がありますが、感作までにはどれくらいの時間がかかるのでしょうか。 論文を紹介します。 日皮会誌:106 (11),1397, 1996 パラフェニレンジアミン…

湿布の光接触皮膚炎はいつまで続く?

NSAIDsの一種であるケトプロフェンには光線過敏の副作用があります。 そのためケトプロフェンが含有された湿布(モーラステープ)は光接触皮膚炎を引き起こすことがあります。 さらに薬の成分は湿布をはがした後でも長く皮膚に残ります。 光接触皮膚炎を起こ…

皮膚乾燥から湿疹になるのはなぜ?

皮膚乾燥は湿疹の原因になります。 それではどうして皮膚乾燥から湿疹が起こるのでしょうか。 ドライスキンによって湿疹が生じるメカニズムは以下の通りです。 ①皮膚の乾燥によってかゆみ過敏が生じる (ケラチノサイトの活性化や表皮内への神経線維の延長に…

歳を取ると皮膚が乾燥するのはなぜ?

歳を取ると皮膚が乾燥しやすくなります。 それはなぜなのでしょうか。 皮膚(角層)の水分は皮脂や汗によって保たれています。 しかし加齢に伴って皮脂腺や汗腺の機能が低下。 それによって皮脂や汗の分泌量が低下するため、皮膚が乾燥しやすくなるのです。 …

脂漏性皮膚炎の予防法

脂漏性皮膚炎は皮脂の過分泌が原因とされています。 皮膚の常在菌(マラセチア)によって皮脂が刺激性の脂肪酸などに分解され、皮膚の炎症を引き起こします。 そのため脂漏性皮膚炎の予防には、抗真菌薬によるマラセチアのコントロールが有効です。 具体的な…