円形脱毛症やケロイドの治療ではステロイドの局所注射(局注)を行います。
ところがステロイド局注の具体的な方法については、教科書にはほとんど記載がありません。
そこで今回は局注についてまとめてみました。
(MB derma 189: 40, 2012)
①使用薬剤
局注にはステロイド懸濁液を使用します。
懸濁液とはステロイドをエステル化し油性にしたもので、注射した部位に留まり、効果が長時間持続するのが特徴です。
薬剤としては「ケナコルトA水濁注」と「リンデロン懸濁注」があります。
円形脱毛症ガイドラインに記載されていて、最もよく使用されているのは皮内用・関節腔用ケナコルトAです。
ケナコルトA水懸注皮内用を生理食塩水ないし塩酸プロカイン、キシロカインで2~10mg/ml になるように調整。
(日本皮膚科学会雑誌 127 (13): 2741, 2017 NAID: 130006259363)
施設によっては、やむをえず筋注用・関節腔用を使う場合がありますが、本来の適応ではなく濃度調整も難しいのが難点です。
②濃度
円形脱毛症のガイドラインには「ケナコルトAの使用濃度は2~10mg/mL」と記載されています。
しかし副作用の観点から原液のままではなく、希釈して用いるのが望ましいでしょう。
濃度に関しては海外の総説では5mg/mL(眉には2.5mg/ml)が推奨されており、私は皮内用・関節腔用ケナコルト-Aを2倍希釈して5mg/mLで使用しています。
5 and 2.5 mg/ml are the preferred concentrations used by the author for the scalp and face, respectively.
(J Investig Dermatol Symp Proc. 16(1): S42, 2013 PMID: 24326551)
ただし,10mg/mL(原液),5mg/mL(2倍希釈),2.5mg/mL(4倍希釈)に有効性に差はないという報告があり、4倍希釈して使用している施設もあるようです。
J Am Acad Dermatol. 73: 338, 2015 PMID: 26183987
③希釈に用いる溶液
希釈に用いる溶液は、ガイドラインには生理食塩水または局所麻酔薬と記載されており、円形脱毛症では生理食塩水を用いて希釈している施設が多いようです。
(ただ肥厚性瘢痕・ケロイドのガイドラインでは、注射後の疼痛を緩和するために、局所麻酔薬で希釈することが推奨されています。)
1回5~10mg程度を局所麻酔薬で希釈し、全量2~5ml程度として注射する
(ケロイド・肥厚性瘢痕診断・治療ガイドライン2018)
④方法
できるだけ細かくまんべんなく行うのがよいため、5mm間隔で1カ所につき50μLを注射します。
1回の総使用量は、円形脱毛症ガイドラインでは10mgまで(5mg/mLで2mL,2.5mg/mLで4mL)とされています。
・1回の診療において総投与量10mgを限度とする。
・1カ所につき50μlを5mm間隔で真皮下層レベルから皮下脂肪レベルに局所注射をする。
・投与間隔は4~6週に1回が推奨される。
(日本皮膚科学会雑誌 127 (13): 2741, 2017 NAID: 130006259363)
投与間隔は4~6週に1回が推奨されており、私は1カ月間隔で行っています。
また6カ月間で効果がみられない場合は中止が望ましいとされているようです。