術後はガーゼや被覆材で創部を保護するのが一般的です。
しかし創部の保護は本当に必要なのでしょうか。
2つの論文を紹介します。
術後感染
まずは術後感染に関する報告です。
Br J Surg. 76(2): 204, 1989(PMID: 2702460)
抜糸まで創部の保護を続けた633人と、術後24時間以降は創部の保護を行わなかった569人で、術後の感染率を比較しています。
【創部感染発症率】
・24時間以降は保護せず:4.7%
・24時間以降も保護:4.9%
術後24時間以降は創部を覆わなくても感染率は変わりません。
縫合創の上皮形成は24~48時間で起こり、その後の創からは細菌は侵入できないそうです。
創部感染の観点では術後24時間以降の保護は必要ないと考えられます。
術後瘢痕
それでは次に美容的な観点ではどうでしょうか。
傷の幅を調べた動物実験を紹介します。
Int Wound J. 11(6): 616, 2014(PMID: 23279979)
ラットの背部皮膚を切開、縫合し、創部の保護を行わなかった12例と、ハイドロコロイドドレッシングを行った12例で、傷の幅を比較しています。
【傷の幅】
ドレッシングなし>ハイドロコロイドドレッシング
創部を保護した創の方が傷の幅は小さくなっています。
これはなぜなのでしょうか。
縫合を行った傷には微小なギャップが生じています。
創部が乾燥するとこのギャップが乾燥壊死を起こすため、傷の幅が大きくなるようです。
しかしハイドロコロイドドレッシングを行うと乾燥壊死を避けることができます。
そのため創部は乾燥させない方がよいようです。
まとめ
術後感染の観点では創部保護は不要、美容的観点では創部保護は必要というのが結論のようです。