皮膚科の豆知識ブログ

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合成吸収糸の種類と違い(バイクリル、モノクリル、PDS)

手術の時に使用する吸収糸にはいろいろな種類があります。

モノクリルとバイクリルとPDSの違いの図

しかしバイクリルとPDSの違いなど、それぞれの特徴について解説してある教科書はあまり多くありません。

具体的にはどのような違いがあるのでしょうか。

 

PDS、バイクリル、モノクリルの違いと使い分け

 

これらの一番の違いは張力を維持できる期間です。

それぞれの糸は溶けてしまうまでの時間に差があるからです。

 

張力がどれくらいの期間維持されるのかを見てみましょう。

【張力維持期間】

・バイクリルラピッド:5日
・モノクリル:1週間
・バイクリル:4週間
・PDS:6週間

 「ERでの創治療」より

 

バイクリルラピッドやモノクリルは短く、PDSは長いのが分かると思います。

消化管などの治癒の早い臓器の縫合では張力維持は短期間でよいので、バイクリルラピッドやモノクリルが使用されます。

 

一方、治癒に時間がかかる皮膚の真皮縫合では、張力を長く維持する必要があるため、PDSが使用されています。

 

真皮縫合で使う糸

 

それでは実際に、真皮縫合で使う糸の種類によって結果は変わるのでしょうか。

術後の肥厚性瘢痕の発症率を調べた報告があります。

Acta Derm Venereol. 80(5): 344, 2000 PMID: 11200831

【肥厚性瘢痕発症率(皮膚腫瘍切除後)】

・バイクリル:31%
・PDS:8%

(p<0.0001)

 

やはりバイクリルよりもPDSの方が効果が高かったようです。

皮膚に使用する吸収糸はPDSが望ましいでしょう。