受傷直後の熱傷に対して、炎症を抑制する目的でステロイド外用薬が使用されることがあります。
標準皮膚科学(第11版)には以下のような記載があります。
Ⅰ度熱傷:紅斑・疼痛が著しければ、ワセリン基剤のステロイド、消炎鎮痛薬を塗布する。
ステロイドは本当に熱傷の炎症を抑制するのでしょうか。
論文を見てみましょう。
Br J Anaesth. 72(4): 379, 1994 PMID: 8155434
ボランティア12人の両足に人工的に熱傷を作成し、左右それぞれにワセリンとステロイド軟膏(デルモベート)の外用が12時間ごとに行われました。
その後3日間の紅斑指数(erythema index:EI)の変化が調査されています。
(●ワセリン、▲ステロイド)
このように紅斑指数に有意差はありません(P=0.25)。
また水疱形成はステロイド外用群のほうが少ないですが、有意な差ではなかったようです。
水疱形成
・ワセリン:100%
・ステロイド:75%
(P=0.25)
また疼痛に関しても調べられています。
MPDT(mechanical pain detection thresholds)=疼痛検知閾値(低いほうが痛みに過敏)
(●ワセリン、▲ステロイド)
疼痛についても有意な差はないようです(P=0.59)。
これらの結果からは、ステロイドには熱傷の症状を抑制する効果はなさそうです。
Ⅱ度熱傷の場合は創傷治癒を阻害する可能性があるのでステロイドは使用しないほうがいいでしょう。
Ⅰ度熱傷の場合もステロイドが症状を改善する可能性は低そうです。
ただ何も塗らないのは抵抗があります。
短期間だけなら気休め程度にステロイドを塗ってみてもいいかもしれません(水疱形成が少ない傾向はあった)。