皮膚科の豆知識ブログ

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外傷に抗菌薬は必要か?

以前、手術後の予防的抗菌薬の効果は証明されていないという論文を紹介しました。

それでは外傷の場合はどうでしょうか。

汚染のない外傷で抗菌薬の効果を調べたメタアナリシスを紹介します。

Am J Emerg Med 13(4): 396, 1995

(PMID: 7605521)

【創部感染発症率】

・予防抗菌薬なし:6.0%
・予防抗菌薬あり:6.8%

odds ratio = 1.16 (95% CI 0.77-1.78)

 

汚染がない創では、予防的抗菌薬に有意な効果はないようです。

一般的な外傷では抗菌薬は必要ないでしょう。 

 

それでは動物咬傷の場合はどうでしょうか。

動物咬傷(犬)で抗菌薬の効果を調べたメタアナリシスです。

Ann Emerg Med. 23(3): 535, 1994

(PMID: 8135429)

【創部感染発症率】

・抗菌薬なし:16.1%
・抗菌薬あり:9.8%

Relative Risk=0.56(95% CI 0.38-0.82)

 

どうやら動物咬傷では予防効果がありそうです。

特に手の咬傷では抗菌薬の投与が推奨されています。

【手の咬傷の感染発症率】

・抗菌薬なし:26.7%
・抗菌薬あり:5.8%

Relative Risk=0.23(95% CI 0.05-0.95)

 

予防効果はなかったという別の研究もあるようですが、動物咬傷では予防抗菌薬を検討してよさそうです。