ハチに刺された場合2回目が危険と言われますが、実際にアレルギーを起こす可能性はどれくらいあるのでしょうか。
まずハチに刺された患者はどれくらいの割合で感作されるのかを考えてみます。
論文を見てみましょう。
JAMA. 262(2): 240, 1989
1年以内にハチに刺された患者27人に対して、ハチ毒の皮膚テストが行われました。
皮膚テスト陽性:7人(26%)
このようにハチに刺された患者の3割程度が感作されるようです。
(刺された直後は検査が陰性なので、1ヶ月程度は間隔を開けたほうがよいそうです)
それではハチ毒に感作された人はどれくらいの割合でアナフィラキシーを起こすのでしょうか。
論文を見てみましょう。
J Allergy Clin Immunol. 100: 760, 1997 PMID: 9438483
ハチ毒に対する皮膚テストが陽性の患者98人の追跡調査です。
その中の65人が調査中にハチに刺されています。
アナフィラキシーを起こした患者:11人(17%)
ハチ毒に感作されている患者の中でアナフィラキシーを起こしたのは17%です。
感作されているからといって必ずしもアナフィラキシーを起こすわけではないようです。
2回目の刺症でアレルギーが起きるのはだいたい5%くらいと考えてよいでしょうか。
ある程度の目安を知っておけば患者さんに説明する時にも役に立つと思います。
ちなみにハチ刺症の皮膚症状には2種類があります。
一つはIgE抗体によるⅠ型アレルギー。もう一つはⅣ型アレルギーです。
①局所反応(Ⅰ型アレルギー):3日以内に消失
②遅延型局所反応(Ⅳ型アレルギー):4日以上持続
(西日本皮膚科 56(2): 280, 1994)
ハチ刺症には抗ヒスタミン薬を処方しがちですが、Ⅳ型アレルギーには無効です。
4日以上持続する遅延型局所反応には、ステロイド内服を検討する必要があります。