前回に引き続き、医師国家試験に出題された皮膚疾患の写真から、皮膚科診断について説明していきます。
第1回で紅斑のみかたの原則を解説しました。
(第1回はこちら>>医師国家試験皮膚科領域①)
・表面がザラザラ:表皮の病変(湿疹)
・表面がツルツル:真皮の病変(薬疹)
しかし原則には例外があります。
今回は表面がザラザラの紅斑について取りあげてみます。
湿疹以外の表面ザラザラ紅斑
紅斑の表面がザラザラしている場合、病変は表皮に存在しています。
これは原因物質が体の外からやってきた外因性の皮疹であることを表しています。
この場合は湿疹と感染症を考える必要があります。
しかしそれ以外にも表皮に病変を形成する場合があります。
それは自己免疫疾患と悪性腫瘍です。
表皮の病変
①外因性の皮疹(湿疹、感染症)
②表皮の自己免疫疾患(乾癬、落葉状天疱瘡)
③表皮内癌
自己免疫疾患は自己免疫の機序で表皮に炎症を起こします。
また悪性腫瘍は表皮の細胞が悪性化することによって、表皮に病変を生じます。
それぞれについて具体的に見ていきましょう。
①自己免疫疾患
基本的に膠原病の皮疹は真皮に病変を生じます。
しかし乾癬は表皮の自己免疫疾患であり、表皮に病変を生じます。
そのため乾癬の皮疹は表面がザラザラしています。
真皮に病変を生じる薬疹と比較してみましょう。
AとB、どちらが乾癬か分かるでしょうか。
パッと見は似ていますが、よくみると表面の性状が異なっています。
表面がツルツルのAが薬疹で、表面がザラザラのBが乾癬です。
また天疱瘡は基本的には水疱とびらんを生じる表皮の自己免疫疾患です。
しかし浅い部分に病変が生じる落葉状天疱瘡は、水疱がはっきりせず湿疹と見た目が似ています。
②悪性腫瘍
悪性腫瘍は腫瘤を形成するものが多いですが、表皮内癌(上皮内癌)は病変が表皮に限局しているため湿疹と見た目が似ています。
以下の写真は日光角化症です。
日光角化症は湿疹と見分けがつかないことが多いです。
鑑別のためには生検が必要ですが、全員に生検を行うことはできません。
そこで現場では、まず湿疹として治療して改善しなければ生検を行うという対応を行っています。
表皮内癌を放置して浸潤癌に進行すると皮疹が隆起します。
まとめ
表皮に病変を形成する疾患は3つです。
①外因性の皮疹(湿疹、感染症)
②表皮の自己免疫疾患(乾癬、落葉状天疱瘡)
③表皮内癌
表面がザラザラの紅斑は以上の3疾患を鑑別する必要があります。
皮膚科は見た目だけで診断ができるのが魅力と言われたりもしますが、見た目だけでこれらを鑑別することは難しい場合が多いです。
そのためKOH法や皮膚生検などの検査を有効活用する必要があるのです。
今回は表皮の病変について解説しました。
次回は感染症の皮疹全般について詳しく解説する予定です。
つづく