皮膚科の豆知識ブログ

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自覚症状がない足白癬に注意しよう

皮膚真菌症診療ガイドライン2019によると、人口の約20%程度(2500万人)が足白癬に罹患しているそうです。

しかし足白癬はある程度まで菌が増殖しないと、痒みなどの自覚症状が出てきません。

それでは足白癬と気がつかずに放置している患者はどれくらいいるのでしょうか。

それを調べた論文を紹介します。

日本皮膚科学会雑誌125(12): 2289, 2015 NAID:130005111655

 

レセプトのデータベースから、医療機関を受診した年間の足白癬患者数が調べられています。

調査結果によると患者数は約488万人で人口の約4%でした。

つまりクリニックや病院を受診するのは全患者の20%程度と推計することができます。

80%の患者が未治療あるいは自己治療を行っているということです。

 

特に2型糖尿病患者は健常者と比べて足白癬の有病率が有意に高いようです。

Mycoses. 50 Suppl 2: 14, 2007 PMID: 17681049

【成人の足白癬有病率】

・健常人:38.0%
・2型糖尿病患者:52.7%

 

それでは足白癬を放置しているとどうなるのでしょうか。

足白癬は蜂窩織炎のリスク因子と報告されています。

Diabet Med, 26: 548, 2009 PMID: 19646196

【足白癬有病率】

・健常人:36.4%
・蜂窩織炎患者:56.1%

(OR=2.4 95%CI: 1.7–3.3)

 

そのため放置していると細菌感染を起こす可能性があります。特に糖尿病患者では感染→壊疽を予防するために積極的に足の観察を行い治療する必要があるでしょう。