ウイルス性疣贅の治療では凍結療法が行われます。
しかし教科書には具体的な方法は書かれていません。
そこで論文から凍結療法について考えてみたいと思います。
接触時間
まず液体窒素の接触時間の目安です。
海外の臨床試験で用いられている手法を見てみましょう。
Br J Dermatol. 94(6): 667, 1976 PMID: 820365
接触時間の目安はイボの周囲が凍結して白くなる程度
イボの周囲が凍結して白くなるのが接触時間の目安のようです。
小さな病変で2~3秒くらい、大きな病変で15~20秒くらいになるでしょう。
接触回数
次に接触回数です。
凍結を1回だけ行った場合と2回行った場合の治療効果を比較した論文があります。
Br J Dermatol. 131(6): 883, 1994 PMID: 7857844
【疣贅の治癒率】
1回:57%
2回:62%
このように凍結は複数回行ったほうが効果が高いようです。ただし具体的な回数は決まっていません。
海外の臨床試験では3回という基準が用いられています。
(CMAJ. 182(15): 1624, 2010 PMID20837684)
日本の論文には5回という記載もあります。
(皮膚 20(3): 422, 1978)
まとめると3~5回になるでしょう。
凍結前の処置
また海外の治療指針には、処置前に表面の角質を削ると凍結効率が増し治癒率が上がるという記載があります。
Am Fam Physician. 84(3): 288, 2011 PMID: 21842775
When using cryotherapy for plantar warts, paring the wart before treatment can increase the clearance rate.
日本の皮膚科医へのアンケートでは、足底のイボに対して角質除去が行われていることが多いようです。
臨床医薬 28(11): 1101, 2012
【角質除去を行っている割合】
・顔:2%
・手:62%
・足底:93%
具体的なエビデンスはなさそうですが、足底のイボの治療では角質を削ってから凍結療法を行うのがよいでしょう。
凍結療法の注意
最後に凍結療法の注意点です。
治療の際に使用するコップや綿棒が使いまわされていることがあります。
しかしウイルスは液体窒素では死滅しないようです。
(Med J Aust. 164(5): 263, 1996 PMID: 8628157)
感染防止の観点からコップや綿棒は使い捨てのものを使用する必要があります。
次の記事では凍結療法の治療間隔について解説します。