ヘルペスはほとんどの症例で、皮疹が出る前に違和感や痛みなどの前駆症状が出現します。
【前駆症状の出現率】
・単純ヘルペス:85%(臨床医薬 29(2): 137, 2013)
・帯状疱疹:70~80%(PMID: 17143845)
それでは前駆症状の時点で抗ウイルス薬を開始したら、皮疹の出現を予防することはできるのでしょうか。
単純ヘルペス
まず前駆症状の時点で治療を開始した単純ヘルペスに関する研究を紹介します。
治療開始までの時間ごとに、水疱出現の抑制率が調べられています。
Sex Transm Infect. 78(6): 435, 2002(PMID:12473805)
【水疱出現抑制率】
・6時間以内:30%
・6~12時間:19%
・12時間以上:18%
このように前駆症状の時点で治療を開始したら、皮疹の出現をある程度予防できるようです。
特に6時間以内に内服を開始したほうが効果が高いことがわかります。
帯状疱疹
一方帯状疱疹ではどうでしょうか。
こちらはエビデンスがなく推奨されていません。
皮疹のない時期から抗ウイルス薬を使用することの有用性を示す明確な根拠はない。
この理由は帯状疱疹の前駆症状がわかりにくいからです。
(単純ヘルペスの場合は何度も再発するので、前駆症状がわかりやすい。)
帯状疱疹の前駆症状を疑う患者57人の中で、実際に帯状疱疹だったのは2人(3.5%)だけだったという論文もあるようです。
(J Infect. 39(3): 209, 1999 PMID: 10714797)
というわけで帯状疱疹の場合は、前駆症状を疑っても抗ウイルス薬は投与せずに、しばらく経過を見るのがよいでしょう。
もし帯状疱疹であれば数日以内に皮疹が出現するはずです。