皮膚科の豆知識ブログ

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なぜ単純ヘルペスと帯状疱疹で薬の量が違う?

抗ウイルス薬の投与量は、単純ヘルペスと帯状疱疹とで違います。

 

【バラシクロビルの投与量】

・単純ヘルペス:1日1000mg
・帯状疱疹:1日3000mg

 

なぜこのような違いがあるのでしょうか。

この理由は、帯状疱疹のほうが症状が強いからだと思われがちです。

しかし本当の理由は異なっています。

 

単純ヘルペスウイルスと水痘帯状疱疹ウイルスの薬剤感受性を調べた報告を見てみましょう。

Drugs. 47(1): 153, 1994 PMID: 7510619

 

 IC50とはウイルスの増殖を50%阻害することができる抗ウイルス薬の濃度です。

この数値が高いほうが薬剤感受性が低いことを示します。

【IC50】

・単純ヘルペスウイルス(1型):0.01-2.7
・水痘帯状疱疹ウイルス:0.17-26

 

このように水痘帯状疱疹ウイルスはIC50が高く、薬剤感受性は単純ヘルペスウイルスの1/10程度です。

そのため高い血中濃度が必要になり、抗ウイルス薬の投与量が多く設定されているのです。