皮膚科の医学書に関する雑感を書くシリーズ。
今回は全3回中の2回目。通読型の医学書についてです。
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通読型の教科書
医学書には教科書タイプとマニュアルタイプがあります。
個々の疾患に関する知識は教科書に書かれています。
一方、具体的な治療法についてはマニュアルに書かれています。
しかしそれだけでは診療はできません。
疾患をどのように疑い、どのように診断するのか。治療薬を何をもとに決定し、どのように使用するか。
実際の診療にはこれらの知識が求められます。
それを学ぶためには教科書とマニュアルの間を埋める通読型の医学書が必要です。
代表的なものは感染症内科の岩田健太郎先生の著書でしょう。
私が研修医の頃は、考え方を解説した読み物的な医学書は珍しく何度も読み込みました。
また「極論で語る」シリーズも、わかりやすく口語調で書かれ、コンパクトにまとまっているので通読しやすく有用でした。
しかし皮膚科の分野では、写真がたくさん並べられているだけの「見た目一発診断」のような本が多く、通読型の医学書はわずかしかありません。
皮膚科の通読型の教科書
とはいえ皮膚科分野でも、通読型の優れた医学書はいくつか存在しています。
1つ目は、皮疹の成り立ちを病態から詳しく解説した「皮疹の因数分解・ロジック診断」です。
「見た目一発診断」ではない理詰めの診断法が解説されています。
こういったコンセプトの本は他にはなく非常に勉強になりますが、内容が高度でとっつきにくいという欠点もあります。
専門医でもすべての内容を理解するのには時間がかかるでしょう。
2つ目は「皮膚病理イラストレイテッド」です。
病理の教科書は病理写真が羅列してあるだけの図鑑のようなものがほとんどです。
しかしこの本は病態から病理所見を解説する通読型になっています。
ここまでしっかりと理屈が書かれている医学書は他にはありませんが、皮膚病理なので読者層が限られるのが残念です。
これらの内容を初心者でも通読できる形でわかりやすく解説した本があればいいかもしれません。
それは皮膚科医以外にも魅力的な教科書になるのではないでしょうか。
つづく
次回はエビデンス型の医学書の雑感。