膿瘍に対しては切開排膿を行い、その後抗菌薬を投与するのが一般的です。
しかし米国感染症学会のガイドラインでは、基本的に(発熱などの全身症状を伴う場合を除いて)抗菌薬は不要と記載されています。
Clin Infect Dis. 59(2): 147, 2014 PMID: 24947530
本当に必要はないのでしょうか。
抗菌薬の効果を調べた論文を見てみましょう。
Ann Emerg Med. 56(3): 283, 2010 PMID: 20346539
抗菌薬投与群88例、プラセボ投与群102例で1週間後の治療失敗率が調査されています。
【治療失敗率】
・抗菌薬投与:17%
・プラセボ:26%
P=0.12、Diffrence: 9%(95%CI, -2 to 21)
このように抗菌薬の投与は治癒率には影響しなかったようです。
ところがその後の研究では抗菌薬によって治癒率が上がるという結果も出ています。
N Engl J Med. 374(9): 823, 2016 PMID: 26962903
膿瘍が2cm以上の患者で、抗菌薬投与群630例、プラセボ群617例の治癒率(治療終了1~2週間後)が調査されています。
【治癒率】
・抗菌薬投与:81%
・プラセボ:74%
P=0.005、Diffrence: 6.9%(95%CI, 2.1 to 11.7)
このように2㎝以上の膿瘍では抗菌薬の効果が示されているようです。
そのため私は基本的に抗菌薬を投与しています。
ただし2cm以下の小さな膿瘍で蜂窩織炎の合併がない場合は切開排膿のみでもいいかもしれません。