伝染性膿痂疹に対してどの外用抗菌薬を使用したらよいのでしょうか。
細菌培養の結果がわかるまで数日かかります。そのため抗菌薬の選択は過去の報告をもとに行う必要があります。
抗菌薬選択の参考として、伝染性膿痂疹の原因菌を見てみましょう。
皮膚科の臨床 49(5): 587, 2007 NAID: 40015474220
伝染性膿痂疹患者344例の原因菌が調査されています。
1 黄色ブドウ球菌(MSSA): 75%
2 黄色ブドウ球菌(MRSA) :23%
3 A群β溶血性レンサ球菌: 5%
伝染性膿痂疹の原因菌はほとんどが黄色ブドウ球菌のようです。またMRSAの割合は20%程度です。
そのためまずはMSSAに感受性がある抗菌薬を選択するのがよさそうです。
薬剤感受性
外用薬では必ずしも感受性のデータが役立つわけではありません。
皮膚表面の薬剤濃度は内服薬と比較してかなり高くなります。
そのためMPC(耐性菌出現阻止濃度)を超え、耐性菌にも効果を発揮する場合があるからです。
実際、黄色ブドウ球菌に関する研究では、ゲンタシン軟膏が耐性菌にも有効である可能性が示されています。
薬学雑誌. 131(11), 1653, 2011 NAID: 130001491121
ゲンタマイシンのMPC:32μg/ml
皮膚表面のゲンタマイシン濃度:895μg/ml
とはいえ薬剤感受性は薬剤選択の参考にはなるでしょう。
黄色ブドウ球菌に対する抗菌薬の感受性を見てみましょう。
膿痂疹患者から検出された黄色ブドウ球菌273株(MSSA197株、MRSA76株)の薬剤耐性を調べた国内の論文です。
J Med Microbiol. 57(10): 1251, 2008 PMID: 18809554
CLSIのブレイクポイントに従って耐性率が調べられています。
<薬剤耐性率>
日常的に多用されているゲンタマイシン(ゲンタシン)は耐性化が進んでおり、有効性が疑問視されています。
耐性がない外用抗菌薬は①ムピロシン(バクトロバン)、②フシジン酸(フシジンレオ)、③ナジフロキサシン(アクアチム)の3種類のようです。
①ムピロシン(バクトロバン)
IDSA(米国感染症学会)のガイドラインではムピロシンが第一選択薬ですが、日本では鼻腔内のMRSAにしか保険適応がなく使用できません。
Clin Infect Dis. 59(2): e10, 2014 PMID: 24973422
Treatment of bullous and nonbullous impetigo should be with either topical mupirocin or retapamulin twice daily (bid) for 5 days.
②フシジン酸(フシジンレオ)
フシジン酸は外用薬のみで使用されている抗菌薬で、使用頻度が低いので感受性が残っているようです。
しかし耐性獲得が早いという意見もあり、多用するのは避けたほうがいいかもしれません。
Clin Infect Dis. 59(10): 1451, 2014 PMID: 25139961
③ナジフロキサシン(アクアチム)
ナジフロキサシンはキノロン系の抗菌薬で、フシジン酸よりも耐性菌の誘導が少ないというデータがあります。
臨床医薬 26(7): 483, 2010
そのため私はナジフロキサシン(アクアチム)を第一選択として使用しています。
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