高齢化に伴って皮膚癌患者は増加しており、90歳を超える患者をみることも多くなりました。
超高齢者に対する全身麻酔や侵襲が高い手術はリスクが高く、慎重な判断が必要です。
それでは局所麻酔の手術はどうなのでしょうか。
論文を紹介します。
Int J Dermatol. 56(6): 681, 2017 PMID: 28321842
局所麻酔の皮膚手術を受けた75~80歳の患者106人と90歳以上の患者104人で、術後合併症の頻度を調査した後方研究です。
【術後合併症】
・75~80歳:10.4%
・90歳~:19.2%
(p=0.07)
このように術後合併症のリスクは90歳以上と75~80歳で有意差はなく、比較的安全に行うことができそうです。
(ちなみに90歳以上の患者のほうが有意にPSは低かったようです(P<0.001))
ただし超高齢者は手術に時間がかかると不穏になるリスクがあります。
一般的に縫縮ができない大きさの腫瘍の場合、植皮術か皮弁術による再建が行われます。
しかし高齢者の顔面の腫瘍では積極的にオープントリートメントを行ってよいかもしれません。
オープントリートメントとは縫合せずに自然な創収縮による治癒を待つ方法で、短時間で手術を完了することができます。
通常は顔面の小さな腫瘍(5mm以下)が適用ですが、高齢者は比較的大きな腫瘍でもオープントリートメントが行えることが多いようです。
平均13.6mm (5~53mm)の顔面の腫瘍15例に対してオープントリートメントを行った報告があります。
皮膚科の臨床 58(11): 1674, 2016 NAID: 40020979784
この論文では整容的に大きな問題になる症例はなく、上皮化までの平均所要日数は46.3日だったようです。