蜂窩織炎にはどのような抗菌薬を使用したらいいのでしょうか。
感染症の治療では、培養検査を行い原因菌に感受性のある抗菌薬を使用するのが一般的です。
ところが蜂窩織炎では培養で菌を分離できず、起炎菌がわからないことが多いことが問題です。
そのため過去の報告をもとに経験的な治療に頼らざるを得ません。
まず蜂窩織炎の原因菌を見てみましょう。
蜂窩織炎の原因菌
蜂窩織炎の原因菌は、ある研究では溶連菌が多く、ある研究では黄色ブドウ球菌が多いなど、結果が一定しません。
蜂窩織炎の原因菌①(PMID: 22101078)
1 溶連菌:58 %
2 黄色ブドウ球菌:14%
蜂窩織炎の原因菌②(PMID: 19646308)
1 黄色ブドウ球菌:50 %
2 溶連菌:27 %
そのため黄色ブドウ球菌と溶連菌の両方を想定した治療を行うのがよいでしょう。
抗菌薬の選択
それではどの抗菌薬を使うのがよいのでしょうか。
内服抗菌薬について、米国感染症学会(IDSA)のガイドラインの記載をまとめてみます。
Clin Infect Dis. 59(2): e10, 2014 PMID: 24973422
まず黄色ブドウ球菌(MSSA)に対してはセファレキシンが有効です。
Because S. aureus isolates from impetigo and ecthyma are usually methicillin susceptible, dicloxacillin or cephalexin is recommended.
MRSAに対してはセファレキシンは無効で、ドキシサイクリン、クリンダマイシン、ST合剤が推奨されています。
Options for treatment of MRSA in those circumstances include oral therapy with doxycycline, clindamycin, or SMX-TMP.
ただしドキシサイクリンとST合剤には溶連菌に対する効果のエビデンスがありません。
The activity of doxycycline and SMX-TMP against β-hemolytic streptococci is not known, and in the absence of abscess, ulcer, or purulent drainage, β-lactam monotherapy is recommended.
そのため溶連菌に対しては、アモキシシリン、セファレキシンの併用が推奨されています。
クリンダマイシンはMRSAと溶連菌の両方に効果があるようです。
If coverage for both streptococci and MRSA is desired for oral therapy, options include clindamycin alone or the combination of either SMX-TMP or doxycycline with a β-lactam (eg, penicillin, cephalexin, or amoxicillin).
これらの内容をまとめると以下の図になります。
内服抗菌薬の感受性
それではMRSAのカバーはどれくらい必要なのでしょうか。
MRSAのカバーは必要か?
蜂窩織炎に対して、MSSAのみカバーした群とMRSAをカバーした群を比較した研究があります。
Clin Infect Dis. 56(12): 1754, 2013 PMID: 23457080
蜂窩織炎患者146人に対して、73人にセファレキシン、73人にセファレキシン+ST合剤が投与されました。
セファレキシンは溶連菌とMSSA、ST合剤はMRSAをカバーしています。
そしてその後の治癒率が調査されています。
治癒率
・セファレキシン+ST合剤:85%
・セファレキシン単独:82%
Difference:2.7%(95% CI:-9.3 to 15)
このように治癒率に差はなく、通常はMRSAのカバーは不要のようです。
したがってセファレキシンが第一選択です。
セファレキシンが使用できない場合の第二選択はクリンダマイシンがよさそうです。
次回の記事ではセファレキシン以外を選択する状況について解説します。