蜂窩織炎はまれに膿瘍を合併することがあります。
その場合は切開排膿が必要になるため、膿瘍の有無を確認しておくことは重要です。
それでは膿瘍を合併する頻度はどれくらいなのでしょうか。
論文を見てみましょう。
Arch Intern Med. 164(15): 1669, 2004
抗菌薬の5日間投与と10日間投与の比較試験に蜂窩織炎患者169人がエントリーされました。
その中で膿瘍を合併していた患者は13人だったようです。
さらにその後、治療中に6人が膿瘍を形成しています。
膿瘍を合併した蜂窩織炎患者:19人(11%)
この結果からは蜂窩織炎患者の約10%が膿瘍を合併するようです。
それでは膿瘍はどうやって診断すればよいでしょうか?
論文を見てみましょう。
Ann Emerg Med. 74(3): 372, 2019 PMID: 30926187
皮膚軟部組織感染症患者1216人(膿瘍あり827人、膿瘍なし389人)で、膿瘍診断における臨床所見と超音波検査の精度が調査されています。
【臨床所見】
・感度:90.3%
・特異度:97.7%
【超音波検査】
・感度:94.0%
・特異度:94.1%
このように臨床所見(視診と触診)だけでもかなりの精度で診断ができるようです。
臨床所見から膿瘍と診断できた患者に超音波検査を行っても、治療方針が変更されたのは1.2%だったようです。
ただし8.6%の症例は臨床所見では判断ができませんでした。
・臨床所見で膿瘍を診断:29.2%
・臨床所見で膿瘍がないと診断:63.2%
・臨床所見では判断不能:8.6%
その場合は超音波検査を行うのがよいでしょう。