ウイルス感染症を疑う場合、抗体検査をオーダーします。
そして以下のいずれかがあれば感染を証明することができます。
- IgM抗体陽性
- ペア血清で抗体値の有意な上昇
しかし結果を見て悩んでしまうことも多いのが実状です。
今回はIgM抗体について考えてみます。
IgG抗体についてはこちら
まずIgM抗体についてです。
IgM抗体は感染早期に産生され、短期間で消失するため、一時点でも陽性が確認できれば初感染の診断が可能です。
ただし検査のタイミングが早すぎた場合はまだ陽性化していない可能性があります。
つまり陰性でも感染の否定はできないこと(偽陰性)に注意が必要です。
それではどれくらいの期間で陽性化するのでしょうか。
麻疹と風疹についてのデータを調べてみました。
麻疹
まず麻疹について国立感染症センターの報告を見てみましょう。
IASR Vol. 42 p189-190: 2021年9月号
麻疹のPCRが陽性だった患者93例について、発症からの時間別にIgM抗体陽性率が調査されています。
【麻疹IgM陽性率】
・0~1日:0%
・2~3日:23.5%
・4~5日:83.9%
・6~7日:100%
このように発症から3日以内では陽性率は低く、4日目以降に検査を行う必要がありそうです。
風疹
次に風疹について国立感染症センターの報告を見てみましょう。
風疹のPCRが陽性だった患者300例について、発症からの時間別にIgM抗体の陽性率が調査されています。
【風疹IgM陽性率】
0日:22.1%
1日:27.0%
2日:34.0%
3日:61.5%
4日:73.3%
5日~:80.0%
風疹では陽性化が若干早く、3日目で陽性率が上昇しています。
ただ4日目以降のほうが確実と言えるでしょう。
まとめ
麻疹と風疹のIgM抗体検査は発症後4日目以降で診断的価値が高いとされています。
発症後3日以内の検体では偽陰性になる可能性が高く、結果の解釈には十分な注意が必要です。
ただしウイルスの種類によって潜在期間に差があるため、陽性化する時期は異なっています。
調べるウイルスごとに確認する必要があるでしょう。
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