ウイルス感染症を疑う場合、抗体検査をオーダーします。
そして以下のいずれかがあれば感染を証明することができます。
- IgM抗体陽性
- ペア血清で抗体値の有意な上昇
しかし結果を見て悩んでしまうことも多いのが実状です。
今回はIgGについて考えてみます。
IgMについてはこちら
IgG抗体はIgMに遅れて出現し長期間持続します。
そこで感染初期と2週間以上あけた回復期を比較して(ペア血清)、有意な上昇があれば感染を証明することができます。
ところが有意な上昇を4倍と記載してある場合と、2倍と記載してある場合があります。
その違いは何なのでしょうか。
HI法、NT法、PA法、CF法
昔はIgGを直接調べることはできず、HI法、NT法、PA法、CF法などの方法で間接的にIgG抗体価を測定していました。
これらは患者血清を2倍ずつ段階希釈して、目視で判定を行います。
そのため測定値は「倍」で表示されます(8倍、16倍、32倍、64倍……)。
ペア血清で有意と判断されるのは4倍以上の上昇です。
- (初期)8倍→(2週後)32倍 など
ところが近年になってIgGを直接測定できる方法が使用されるようになりました。
EIA法
EIA法はIgGとIgMを分けて直接測定できるのが特徴で、判定は機械で行われます。
そのため測定値は「倍」ではなく、連続した数値で表示されます(1.6、12.5など)。
機械で処理するので便利になった一方、測定値の単位が違うので有意な上昇を判断できなくなってしまいました。
そこで国立感染症研究所で、風疹に関してHI法とEIA法の相関性の調査が行われています。
【HI法とEIA法の相関】
8倍=2.217
16倍=4.032
32倍=7.332
「HI価が2倍に上昇」と相関するのは「EIA価が1.8倍に上昇」と推測されます。
そしてEIA価が1.8倍以上に上昇すると、HI価が2倍を超えて4倍に上昇するようです。
この結果を元に、風疹と麻疹の届出ガイドラインでは、EIA法の有意上昇は「2倍以上」と定められています。
「抗体価の有意上昇」とは、急性期の抗体価に比して、回復期の抗体価が測定誤差以上の上昇(EIA法では2倍、HI法・NT法・PA法では4倍)を認めることです。
医師による麻しん届出ガイドライン第五版
まとめ
このようにペア血清の有意な上昇の基準は測定法によって異なっています。
- HI法、NT法、PA法、CF法:4倍以上
- EIA法:2倍以上
抗体価を調べる時は、測定法が何かを確認するのが重要です。
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