スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)と中毒性表皮壊死症(TEN)は危険な重症薬疹です。
SJSの死亡率は1~5%、TENに進行した場合の死亡率は25~35%と報告されています。
治療の第一選択はステロイド全身投与です。
ところが全身にびらんが拡大した段階でステロイドを投与すると、感染症を併発して逆に死亡率が上昇する可能性が指摘されています。
熱傷センターに搬送された重症のTEN患者30人(ステロイドあり15人、なし15人)の調査を見てみましょう。
Ann Surg. 204(5): 503, 1986 PMID: 3767483
進行してしまった段階では、ステロイドを投与したほうが死亡率が高いという結果が出ています。
【死亡率】
・ステロイドあり:66%
・ステロイドなし:33%
皮疹が広がる前にできるだけ早く治療を開始することが重要です。
それではどれくらい早く治療を始めればよいのでしょうか。
論文を見てみましょう。
ステロイドの投与が行われなかったSJS/TEN患者321人の経過が調査されています。
Br J Dermatol. 167(3): 555, 2012 PMID: 22639874
病変が最大に拡大するまでの期間(Duration from onset to maximum detachment):7.6日
このように病変が全身に拡大するまでには平均7.6日かかるようです。
治療開始がそれ以降になると死亡率が上昇する可能性があり、発症後7日以内に治療を開始するのが望ましいでしょう。
日本皮膚科学会のガイドラインでも、発症7日前後までの治療開始が推奨されています。
実際、TEN患者54症例の解析では、発症から皮膚科受診までの日数と死亡率が相関すると報告されています。
日本皮膚科学会雑誌 130(9): 2059, 2020 NAID: 130007889713
発症から皮膚科受診までの期間
・生存群:5.4日
・死亡群:13.5日
(P=0.003)