皮膚科の豆知識ブログ

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睡眠薬代わりに第一世代抗ヒスタミン薬を出す?

第1世代抗ヒスタミン薬には鎮静作用があり、鎮静性抗ヒスタミン薬と呼ばれています。

Allergy. 65(4): 459, 2010 PMID: 20146728

眠気の発生率

・ポララミン:40%
・アタラックス:80%

 

そのため基本的には第2世代抗ヒスタミン薬が使用されます。

ところが内科医101名へのアンケート調査では、第1世代抗ヒスタミン薬を第一選択として使用している医師が15%いるようです。

J Environ Dermatol Cutan Allergol. 33(3): 153, 2009 NAID: 10025618750

治療の第一選択

・第2世代抗ヒスタミン薬:83%
・第1世代抗ヒスタミン薬:15%
・その他:2%

 

どうやら「痒くて眠れない患者が眠れるからいい」という考えで睡眠薬代わりに処方されるケースが多いようです。

 

ですが本当に「眠れるからいい」のでしょうか。

論文を紹介します。

Curr Med Res Opin. 22(7): 1343, 2006 PMID: 16834833

 

健常人18人に対して眠前に抗ヒスタミン薬を投与し、ポリソムノグラフィーで睡眠が調査されています。

(1日目:プラセボ、2日目:第2世代(アレグラ)、3日目:第1世代(ポララミン))

REM睡眠の時間

・プラセボ:93分
・第2世代抗ヒスタミン薬:96分
・第1世代抗ヒスタミン薬:78分

 

このように第1世代の抗ヒスタミン薬はREN睡眠を障害し短縮します。

つまり睡眠の質を低下させてしまうのです。

したがって睡眠薬代わりに使うのには不適切です。

第一世代抗ヒスタミン薬

Allergy. 65(4): 459, 2010 PMID: 20146728

 

さらに主観的な眠気と鎮静作用は必ずしも相関しません。

眠気を感じていない患者でも,自動車運転などの認知機能は低下している可能性があるのです。

 

患者が眠れないのは蕁麻疹の皮疹が痒いからであって、不眠症だからではありません。

したがって私は第1世代抗ヒスタミン薬を夜間不眠対策で用いることはほとんどありません。