皮膚の痒みは、ヒスタミンが神経に作用することで誘発されます。
そのため神経のヒスタミン受容体を阻害する抗ヒスタミン薬には、痒みを抑制する効果があります。
しかし湿疹の痒みを起こす物質はヒスタミンだけではありません(IL-4、IL-13などのサイトカイン等)。
抗ヒスタミン薬は湿疹に対して有効なのでしょうか。
接触皮膚炎に関する論文を見てみましょう。
Acta Derm Venereol. 78(3): 194, 1998 PMID: 9602225
ニッケルアレルギー患者27人にニッケルで接触皮膚炎を2回起こし、それぞれプラセボとセチリジンの投与が行われました。
そして痒みスコアと皮膚症状(パッチテストスコア、画像解析)が調べられています。
まず痒みスコアを見てみましょう。
痒みに関しては有意な差はないようです。
【痒みスコア】
・プラセボ:28.9
・抗ヒスタミン薬:30.0
(p=0.59)
次に皮膚症状を見てみましょう。
肉眼的なスコアに差はありませんが、画像で解析すると有意な差があるようです。
【パッチテストスコア】
・プラセボ:3.3
・抗ヒスタミン薬:3.1
(p=0.68)
【画像解析】
・プラセボ:51.07
・抗ヒスタミン薬:41.73
(p=0.03)
この結果からは、肉眼ではわからないくらいの若干の皮疹改善効果はあるようですが、抗ヒスタミン薬単独ではほとんど効果はないと考えられます。
湿疹の痒みを起こす物質はヒスタミンだけではありません。
抗ヒスタミン薬が抑制するのはヒスタミン依存性の痒みだけなので、有効性は低いのでしょう。
ただしステロイド外用と併用すると効果があるかもしれません。
アトピー性皮膚炎の論文を見てみましょう。
Br J Dermatol. 148(6): 1212, 2003 PMID: 12828751
400人のアトピー患者に対して、ステロイド外用に加えて抗ヒスタミン薬(フェキソフェナジン)かプラセボの投与が行われました。
(抗ヒスタミン薬:201人、プラセボ:199人)
そして投与前後の痒みスコアの変化が調べられています。
【痒みスコアの変化】
・プラセボ:-0.5
・抗ヒスタミン薬:-0.75
(p=0.0005)
このように抗ヒスタミン薬は有意に痒みを減少させています。
つまりステロイド外用を行っている状況であれば、補助療法として抗ヒスタミン薬は有効と考えられます。