潰瘍治療薬は剤型によって3つに分類するとわかりやすくなります。
- 油脂性基剤(水を保つ)
- 水溶性基剤(水を減らす)
- 乳剤性基剤(水を増やす)
創部の水分の状態に応じて薬剤を使い分けるのが創傷治療の原則です。
剤型別に外用薬の使いわけを解説したいと思います。
今回は油脂性基剤です。
油脂性基剤の製剤
油脂性基剤の製剤には様々なものがありますが、創面の保護と保湿効果を期待するなら主剤を含まない プロペトで十分です。
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基剤 |
主剤 |
プロペト |
ワセリン |
なし |
ゲンタシン軟膏 |
ワセリン |
ゲンタマイシン |
亜鉛華軟膏 |
ワセリン+ミツロウ |
酸化亜鉛 |
アズノール軟膏 |
ワセリン |
ジメチルイソプロピルアズレン |
プロスタンディン軟膏 |
プラスチベース |
アルプロスタジルアルファデクス |
それではその他の製剤についてはどうでしょうか。
ゲンタシン軟膏
油脂性基剤のなかで最も使用されているのはゲンタシン軟膏で、一番なじみがある外用薬と言えるでしょう。
抗菌薬による創感染の予防効果を期待したいところです。
ところが手術創に対するワセリンと抗菌薬のランダム化比較試験では、感染率に有意差はなく、感染予防効果は乏しいようです。
JAMA. 276(12): 972, 1996 PMID: 8805732
術後感染発生率(術後4週間)
・ワセリン:2.0%
・抗菌薬:0.9%
両群間の差(95%CI):1.1%(-0.4 to 2.7%)
また長期使用による耐性菌の出現にも注意が必要です。
そのため褥瘡ガイドラインには、使用は短期間にとどめるように記載されています。
抗菌薬含有軟膏は油脂性基剤なので、創面の保護目的と感染の制御、予防目的で短期間の使用であれば用いてもよいが、長期使用により耐性菌の出現する可能性があるので注意を要する
(日本皮膚科学会雑誌 127(9), 1933, 2017 NAID: 130005996935)
「外来に常備してあるのがゲンタシン軟膏だけ」など選択せざるをえない状況は少なくありません。
しかし使用するとしても急性期の浅い傷に限り、短期間にとどめる必要があるでしょう。
慢性期の深い創傷に対しては、長期間の外用が必要になるため使用すべきでないと記載されています。
慢性性期の深い褥瘡に対して、抗菌薬含有軟膏を漫然と使用すると、耐性菌の出現する可能性があるため、基本的には用いるべきでない
(日本皮膚科学会雑誌 127(9), 1933, 2017 NAID: 130005996935)
亜鉛華軟膏、アズノール軟膏
亜鉛華軟膏とアズノール軟膏には、添加物としてそれぞれセスキオレイン酸ソルビタンとラノリンが含有されていて、油脂性基剤ながら吸水作用があります。
そのため多少浸軟した創面にも使用できますが、乾燥に注意が必要です。