皮膚科の治療では保湿剤が重要な役割を果たします。
それでは保湿剤には具体的にはどのような効果があるのでしょうか。
再燃予防効果
保湿剤は皮膚炎そのものに対する直接的な効果は期待できませんが、ドライスキンを改善することができます。
そのためドライスキンが原因になる疾患(アトピー性皮膚炎,手湿疹,皮脂欠乏性湿疹)では、症状が改善した後も保湿剤を続けることで再燃を予防することができます。
論文を見てみましょう。
まずアトピー性皮膚炎では、保湿剤の使用で再燃リスクが低下することが示されています。
【6か月以内の再発率】
・保湿剤使用:32%
・保湿剤未使用:68%
Hazard ratio:3.2 (95% CI: 1.3 to 7.8)
J Eur Acad Dermatol Venereol. 23(11): 1267, 2009 PMID: 19508310
手湿疹でも、保湿剤の使用で再燃までの期間が延長することが示されています。
【再燃までの期間(中央値)】
・保湿剤使用:20日
・保湿剤未使用:2日
Acta Derm Venereol. 90(6): 602, 2010
ステロイドとの併用効果
また保湿剤とステロイド外用薬と併用することで、症状をより改善することができる可能性もあります。
論文を見てみましょう。
J Eur Acad Dermatol Venereol. 26(5): 597, 2012 PMID: 21605175
手湿疹患者に対して、①ステロイド外用1日2回と②ステロイド外用1回+保湿剤1回が行われました。
そして2週間後の重症度スコアがそれぞれ調査されています。
【2週間後の重症度スコア(HEES)】
・0.9:ステロイド1回+保湿剤1回
・2.5:ステロイド2回
(p=0.019)
このようにステロイド外用1日2回より、ステロイド外用1回+保湿剤1回のほうが効果が高い可能性が示されています。
治療前の重症度が高い症例(HEES>8)に限ると有意差がなかったようですが(P= 0.514)、少なくとも同等の効果は期待できるようです。
そのためステロイドだけではなく保湿剤も併用して治療したほうがよさそうです。