ステロイド外用薬はどのくらいの量を1日何回塗ればよいのでしょうか。
添付文書には「1日1~数回適量を塗布」と記載されていることが多く不明瞭です。
前回の記事では外用回数について解説しました。
今回はステロイドの外用量について考えてみます。
finger tip unit(FTU)
海外にFTU(finger tip unit)という概念があり、外用量の1つの目安になります。
Clin Exp Dermatol. 16(6): 444, 1991 PMID: 1806320
具体的には示指の先端から第一関節までチューブから押し出した量(約0.5g)が、手のひら2枚分に対する適量とされています。
全身に塗ると40.5FTU。
1FTU=0.5gで計算すると約20gになります。
このようにFTUは患者の理解を得やすく、外用指導の便利なツールとして用いることができます。
ただし日本のチューブは欧米より小さいため、FTUが0.5gより少ない可能性も指摘されています。
【1FTUの比較】
・5gチューブ=約0.2g
・10gチューブ=約0.3g
・25gチューブ=約0.5g
治療. 91: 1375, 2009 NAID: 50007064327
つまりFTUで外用すると必要量より少なくなる可能性があるのです。
(5gチューブ:40.5FTU=8g)
日本でFTUは使えるか?
それでは日本ではFTUは使えないのでしょうか。
別の論文を見てみましょう。
(広範囲皮膚炎におけるステロイド外用剤必要量の研究 皮膚科紀要. 82(1): 75, 1987)
広範囲皮膚炎患者41人に対してステロイドを1日2回外用し、皮疹改善に要した外用量を調べた研究です。
体表面積9%あたりの1日平均外用剤量:2.31~2.28g
全身の1日平均外用剤量:25g(1回12.5g)
全身に1日2回で25gなので、1回あたりの外用量は12.5gになります。
海外の基準(20g)と比べると約半分の量ですが、それでも十分な効果は望めるようです。
つまり日本のチューブでFTUを用いると、「1FTU=0.5gより少ないが十分な効果は期待できる」と考えられます。
私は全身に使用する場合、以下の教科書の記載を参考にして1回10g(上半身に5gチューブ1本、下半身に5gチューブ2本)と指導することが多いです。
私の経験では、通常の体格の成人では1回5gチューブを上半身、さらに5gチューブを下半身に要し、全体で10g必要となる。したがって1週間で140g必要となる。
(アトピー性皮膚炎が楽しくなる)