粉瘤は炎症を起こすことがあります。
炎症を起こす頻度は表皮嚢腫で50%、外毛根鞘嚢腫で15%と報告されています。
Clinically, trichilemmal cysts become inflamed infrequently 14.8%, in this series compared with 50% of epidermoid cysts.
Br J Dermatol. 94(4): 379, 1976
従来、粉瘤の炎症は細菌感染症の一つとしてとらえられていました。
しかし近年は考え方が変わってきています。
論文を見てみましょう。
Arch Dermatol. 134(1): 49, 1998 PMID: 9449909
炎症を起こした粉瘤25例と、起こしていない粉瘤25例の調査です。
皮膚を切開し両者の内容物から細菌培養検査が行われています。
結果は以下の通りで、両者に培養陽性率、陽性菌種の差はなかったようです。
この結果から、粉瘤の炎症はほとんどが細菌感染によるものではなく、角化物に対する異物反応と考えられています。
皮膚感染症に対して一般的に使用されるセファロスポリン系の抗菌薬は効果がないと考えてよいでしょう。
そのため米国皮膚科学会は炎症性粉瘤に対するルーチンの抗菌薬投与は推奨していません。
Don’t routinely prescribe antibiotics for inflamed epidermal cysts.
万が一抗菌薬を使用せざるをえなければ、抗炎症作用のあるテトラサイクリン系やマクロライド系を選択するのがよいかもしれません。
If the organism is not significantly contributingto the inflammation, then would use of antibiotics withknown anti-inflammatory properties, such as erythromycin or tetracycline, alter the clinical course?