拙著「誰も教えてくれなかった皮疹の診かた・考えかた」の読者から、初期対応と皮膚科コンサルトのタイミングが知りたいとのご意見をいただきました。
そこで紅斑を3つに分けてそれぞれの対応について解説していきます。
前回は境界明瞭な表面がツルツルの紅斑(真皮の病変)について解説しました。
今回は境界不明瞭な表面がツルツルの紅斑(皮下組織の病変)についてです。
皮下組織の病変は単発性と多発性の2つに分けて考えます。
緊急性のある病態
初期対応を考える上で重要なのは緊急性です。
単発性の鑑別診断は蜂窩織炎と静脈うっ滞です。
この中で緊急性のあるのは重症の蜂窩織炎(壊死性筋膜炎)になります。
一方、多発性の鑑別診断は自己免疫疾患(結節性紅斑、血管炎)と静脈うっ滞です。
緊急性のある病態は血管炎になります。
初期対応
それでは初期対応について考えていきましょう。
単発性の場合
- 急性関節炎の除外
- 壊死性筋膜炎の除外
- 抗菌薬開始
単発の病変の場合、まず急性関節炎の鑑別が必要です。
急性関節炎が除外できれば、蜂窩織炎を考え抗菌薬を開始してよいでしょう。
ただし壊死性筋膜炎疑う場合は高次医療施設への搬送が必要です。
以下の所見を伴う場合は壊死性筋膜炎の可能性を考えます。
- 意識変容を伴う発熱、血圧低下
- 皮膚所見に合致しない重度の痛み
- 皮膚の病変範囲を超えた皮下硬結
- 皮膚の病変範囲を超えた浮腫や圧痛
- 捻髪音(組織内のガスを示唆する所見)
- 水疱形成
- 皮膚壊死、紫斑
- 初期の抗菌薬治療に反応しない
(Clin Infect Dis. 59(2):147, 2014、PMID: 24947530)
とはいえ最初期の壊死性筋膜炎と蜂窩織炎を確実に鑑別するのは不可能です。
しっかりとフォローアップして評価しましょう。
多発性の場合
多発性の場合は静脈うっ滞と自己免疫疾患の鑑別が必要です。
皮膚生検で診断を行います。
皮膚科コンサルトのタイミング
次に皮膚科コンサルトのタイミングについて解説していきます。
①壊死性筋膜炎を疑う病変
壊死性筋膜炎は緊急の外科的処置が必要です。
この場合は皮膚科に限らず、緊急処置が可能な高次施設へ救急搬送してください。
②抗菌薬の効果が乏しい単発病変
単発の病変では、抗菌薬の効果が乏しい場合は静脈うっ滞を考えます。
静脈精査が必要なので皮膚科や血管外科へのコンサルトが望ましいでしょう。
③多発病変
多発病変の場合は自己免疫疾患の可能性があり、皮膚生検が必要です。
皮膚科へ紹介しましょう。
今回は以上になります。
次回は紫斑について解説します。