果物や豆類に含まれるアレルゲンと、食物アレルゲンの構造は類似しています。
そのため花粉症患者が特定の食物を摂取すると、交差反応でアレルギー症状を発症することがあります(花粉・食物アレルギー症候群)。
それでは具体的にはどんな花粉が症状を起こすのでしょうか。
まず花粉症を起こす植物をまとめてみます。
花粉症を起こす植物と飛散時期
アレルギーを起こす花粉は樹木と雑草の2つに分類されます。
そして樹木にはヒノキ科とカバノキ科。雑草にはイネ科とキク科があります。
樹木
- ヒノキ科(スギ、ヒノキ)
- カバノキ科(ハンノキ、シラカバ)
雑草
- イネ科(オオアワガエリ、カモガヤ)
- キク科(ヨモギ、ブタクサ)
このように花粉は4つの科に分類されますが、飛散時期についても見てみましょう。
おおむね以下のようになるようです。
樹木は春に、雑草は夏から秋に飛散します。
【花粉の飛散時期】
春:ヒノキ科、カバノキ科
夏:イネ科
秋:キク科
花粉症の頻度
それでは、それぞれの花粉症患者はどれくらいいるのでしょうか。
論文を見てみましょう。
日本鼻科学会会誌 56 (4), 632-638, 2017、NAID: 130006286423
1. ヒノキ科(スギ):38%
2. イネ科:19%
3. キク科:10%
スギ花粉症が最も多く、スギ花粉症患者の約7割がヒノキにも感作されています。
Ann Allergy Asthma Immunol. 74(4): 299, 1995、PMID: 7719888
そしてイネ科、キク科と続きます。
カバノキ科は主に本州中部以北に自生するため、ヒノキ、イネ、キク科と比較して患者は少ないようです。
ただし北海道での頻度は高く、6%と報告されています。
日本耳鼻咽喉科学会会報 116 (7), 779, 2013、NAID:10031189745
花粉症と食物アレルギー
次に食物と交差反応を起こしやすい花粉についてまとめます。
花粉食物アレルギー症候群の原因となる抗原は、PR-10とプロフィリンの2種類です。
まずPR-10はバラ科の果物(リンゴ、モモ)やマメ科の食物に含まれる抗原です。
そしてこのPR-10はカバノキ科花粉にも含まれています。
そのためカバノキ科花粉症患者は食物アレルギーの発症率が高く、40%の患者に生じるとされています。
口腔・咽頭科 32 (2) 103-107, 2019.
次にプロフィリンはウリ科の果物(メロン、スイカ)含まれる抗原です。
そしてこのプロフィリンはイネ科、キク科花粉にも含まれています。
ただし主要抗原ではないため感作率は低く、食物アレルギーを生じるのは花粉症患者の10-20%とされています。
一方、ヒノキ科の花粉にはPR-10、プロフィリンは含まれておらず、食物アレルギーの発症は少ないようです。
したがって食物アレルギー患者をみた場合は、まずカバノキ科、キク科、イネ科の花粉症に注意する必要があるでしょう。