2025年2月に新刊「皮膚疾患データブック」が出版されました。

その出版までの4年以上に渡る道のりを、「執筆の裏側」としてXで発信してきました。
それらのツイートを、加筆修正の上、このブログにまとめておきたいと思います。
執筆前夜
新刊の執筆は、実は前著「誰も教えてくれなった皮疹の診かた・考えかた」出版(2022年1月)の1年前から始まっていました。
遡ること4年前、前著執筆中の2020年の年末。
メジカルビュー様から書籍執筆の依頼をいただきました。
1冊だけでも大変なのに、2冊も同時に書けるだろうか…。
しかし「1冊目がコケたら2冊目の出版はない」という話を目にしました。
1冊目の出版後ではもうチャンスはないかも。そう考えた私は執筆を承諾したのでした。
今回のテーマは「皮膚科のマニュアル本」です。
医学書は大きく「成書」「マニュアル本」「通読本」の3つに分類されます。
1冊目の書籍は通読本でしたが、今回はマニュアル本。
まったく違うタイプの書籍へのチャレンジです。
加えて出版社様からいただいたコンセプトは「皮膚科の攻略本」。
ゲームの攻略本をイメージしたポップで手軽な本を目指すというものでした。
大変面白いアイデアです。
しかし軽めのマニュアル本はすでに数多く出版されており、それらと代わり映えしない書籍では意味がありません。
そこで私は2つのテーマを設定しました。
①診断アルゴリズム
②具体的な数値や根拠を引用
実際の臨床現場では「診断がわからないからマニュアルのどこを見ればいいのかわからない」というケースが少なくありません。
今回の著書はこのような診断アルゴリズムをもとにして構成することしました。
さらにマニュアル本には「なぜその検査や治療を選ぶのか」という根拠の記載がなく、単純な丸暗記になってしまい応用が効きません。
そこで今回の著書はなるべく具体的な数値を示し、マニュアル本では曖昧になりがちな「根拠」をきちんと引用したいと考えました。
出版社様のコンセプト「ゲームの攻略本」に加え、これらの2つのテーマを設定。
今までにない皮膚科のマニュアル本になるはずです。
しかし完成まで4年もかかることになるとは、この時(2021年の春)は予想もしていなかったのです…。
執筆開始
執筆に先立ち、まず目次を作成します。
診断アルゴリズムをもとにして、全体の内容を構成しました。
代表的な50疾患をまず3つのグループに分け、その後10個のカテゴリーに分類します。
そして執筆に入る前に、既存の皮膚科のマニュアル本、教科書に一通り目を通しました(古いものが多いですが)。これらとの差別化も意識したいところです。
2021年4月、執筆開始。
文献を集め、データを整理して原稿に落とし込んでいきます。
さらにガイドラインやup to dateにも目を通します。
しかし実際に執筆を進めていく中で、ひとつの問題に行き当たったのでした…。
それは臨床の現場では、「エビデンスだけでは解決しない問題」が多いということです。
本当に役立つのは経験にもとづくノウハウだったりします。
そこで原稿にエビデンスだけでなく、自分の臨床経験も盛り込んでいくことにしました。
教科書的な基本的な記載をまとめ、文献からデータを取り入れ、さらに自分の臨床経験も盛り込んでいく。
これにはとてつもない時間がかかり、ひとつの疾患の原稿作成に最低2週間は必要です。
このペースでは50疾患を書き終えるにかかる2年以上かかります…。
だめだ、これは絶対に書き終わらない。
絶望するような作業量を目の前にして気が遠くなりました…。
とはいえ一歩一歩進めていくしかありません。
何度も挫折しかけましたが、疾患一覧表にチェックを入れ少しでも進んでいることを確認。
なんとかモチベーションを維持します。
収集した論文はnotionのデータベースで整理しています。とっつきにくいですが便利なツールですね。
さらにゲーム攻略本っぽさにもこだわり、色々なアイデアを入れ込んでいきます。
各疾患ごとにパラメーターを設定。


診断に必要な項目をランキングして可視化。

通読しやすいように、攻略本っぽいQ&A形式で構成。

こうして毎日コツコツと執筆を続け、執筆開始から約1年半が経過。
合計何時間かかったのでしょうか…。
2022年9月、ついに原稿が完成します。
すべての原稿をメールで送信し終え、ようやく執筆から離れることができました。
しかしこれからが本番ということは、前著の経験からわかっています。
今後、地獄の校正作業が待っているのです。
しばしの休息を楽しむことにします。
ところが…。
校正作業
原稿は無事に完成。
これから校正作業に入り、2023年春に出版予定となりました。

情報量が多い書籍なので、見やすさにもこだわりたい。
そんな思いから、見本のレイアウトに細かい修正を入れていきます。
こちらが初期レイアウト。縦に読むのか、横に読むのか分かりにくく、ややゴチャゴチャしています。

そこで、すっきりとした1段組へ修正を指示。

ところが、細かい注文を入れまくったのが災いしたのか、担当者様からの連絡が途絶えてしまいます。
1年以上進捗がなく、脳をよぎる「制作中止」の文字。
しかし体制が変更になった後、レイアウト作成作業が再開。
2024年4月にようやく完成を迎えます。
レイアウトの完成までに1年半。
この時点で2021年の執筆開始からほぼ3年が経過しています。

モチベーションはかなり下がっていましたが、気を取り直して校正作業の開始です。
今回の書籍は400以上の引用文献があり、これらのチェックが本当に大変です。
これが書籍の執筆で一番キツい作業でしょう。
さらに執筆開始から3年が経過しているため、全面的に書き直しが必要になる部分もあり、校正作業にはかなりの労力を要します。
校正のおおまかな流れはこんな感じです。
①プリントアウトした原稿をチェック
②iPadでPDFデータを修正
そして4ヶ月ほど費やし、ようやく第1回の校正作業が終了。
文献が多い分、前作よりも遥かに大変でした。
そして間髪入れず第2回の校正作業の開始です。
よく確認すると引用文献の番号間違いがあるようです。
仕方なく400以上の引用文献の番号を自分で一つ一つ確認していきます。
さらに校正作業中に発表された新たなガイドラインを追加したり、細かい修正が続きます。
そして2ヶ月半ほどかけて第2回の校正が終了。
校正作業を開始して半年が経過しています。
本来、校正は初校と再校の2回で終わりです。
しかしあまりにも修正点が多いので、もう1回校正をお願いしました。
2024年11月、最後の校正作業を開始。
まだまだ修正点が多く時間がかかりましたが、12月末にようやく終了。
結局、校正に8ヶ月ほどかかってしまいました…。
出版前夜
出版が間近に迫り、書籍のタイトルとカバーデザインを検討します。
本の売れ行きは、この2つで90%決まると言われているそうです。
今回の書籍のコンセプトである「ゲームの攻略本」をどれくらい前面に出すのかが問題になります。
こちらはタイトル案のひとつです(画像はイメージ)。
某ゲームをイメージしたポップでキャッチーなタイトルとのこと。
出版社様は「若者に刺さりまくるはず」…と言われますが、一般の読者(特に女性)からは敬遠されてしまう気がします。
もう少し無難なタイトルに変更していただくようお伝えしました(笑)。
デルマクエストのタイトルに併せて、カバーデザイン案もゲーム感満載の攻めたデザインでした。
こちらも無難なデザインへの変更をお願いしました。
最終的に決定したタイトルは「皮膚疾患データブック」。
カバーは青を基調としたデザインになりました。
当初の案に比べるとかなり一般向けになっています。

ただ「データブック」のタイトルは初学者向けっぽくはない印象です。
もう少し初学者が手に取りやすいタイトルにすべきではないか…とも思います。
しかしソフトウェアエンジニアの中島聡さんは、ベストセラーを生み出す秘訣について、こう述べられています。
「本の構成やタイトルや装丁は可能な限り編集者に任せる」
これ以上口を出すのは止めて、出版社様にお任せしました。
とはいえ、すでにタイトルとカバーデザインに口出ししており、それが裏目に出なければよいのですが…。
そして2025年1月、発刊日が2月28日に決定。
アマゾンでも予約開始となりました。
予約開始に併せてXで告知を行います。

皆様のお陰で、一瞬だけアマゾンの売れ筋ランキング1位になりました。
出版社様も「SNSで告知していきます!」と言ってくださいましたが、発信力に若干の不安も…(笑)。

書籍の価格は税込み7,150円に決定。
うーん…私がリテイクを出しまくったせいか、ちょっと高めですね。
せめて税込み6,800円くらいだったら…とも思います。
そしてこの裏では、データの最終チェックが続いていたのでした。
「基本的には修正はできません!」
と注意された上で、最終版のデータを確認させてもらいました。
しかしこの時点でもまだミスが残っています…。
校正は出版社任せでは駄目ということですね。
終わりのない修正作業が続きます。
そして2025年2月上旬、約1年間かけて修正作業が終了。
トータル4年かかり、ようやく完成を迎えます。

発売の約1週間前、書籍の見本が手元に届きます。
自分の本を手に取った瞬間はやはり嬉しいものですね。
こうして発売日の2月28日を迎えます。
出版まで4年も費やした渾身の書籍です。
ご購入いただけましたら幸いです。
