皮膚科の豆知識ブログ

皮膚科専門医のブログです。日々の小さな疑問を解決する論文を紹介します。

湿疹に内服ステロイドを使う場面は?

症状が重篤な湿疹に対しては内服ステロイドを使うことがあります。

それでは具体的には、どのような場面で、どれくらいの量を使えばよいのでしょうか。

接触皮膚炎のガイドラインを見てみましょう。

日本皮膚科学会雑誌 130(4), 523, 2020 NAID: 130007833597

 

このように重症例に限りプレドニゾロン20~30㎎/日を1週間程度使用することが示されています。

【ステロイド内服】

20~30mg/日、1週間程度(重症例に限る)

 

それでは皮疹が重症とは具体的にはどのような状態なのでしょうか。

海外の接触皮膚炎ガイドラインに具体的な記載があります。

Ann Allergy Asthma Immunol. 3 Suppl2: S1, 2006 PMID: 17039663

 

「病変が体表面積の20%を超える」場合を重症と判断しているようです。

 When more than 20% of the body is involved, systemic therapy is warranted. 

 

ちなみに用量は0.5~1mg/kg/日と日本より多く、期間も10~14日と長くなっています。

(ただ1mg/kg/日を2週間は若干多すぎるような気がします)

The recommended dose is 0.5 to 1 mg/kg daily for 5 to 7 days, and only if the patient is comfortable at that time is the dose reduced by 50% for the next 5 to 7 days. 

 

日本のガイドラインと合わせて考えると、「病変が体表面積の20%を超える場合にプレドニゾロン20~30㎎/日を1週間程度使用する」という形になるでしょう。

 

またガイドラインには書かれていませんが、私は顔面の症状が強いときもステロイド内服の適応と考えています。


ただし安易にステロイド内服を開始することは長期内服に陥る危険性を含んでいます。

特にアトピー性皮膚炎に関しては、ステロイド内服は推奨されていないことに注意が必要です。

長期間のステロイド内服には種々の重篤な全身性副作用があることから、ステロイド内服薬によってアトピー性皮膚炎を長期間コントロールする治療法は一般的に推奨されず、投与するとしても短期間にとどめるべきである。

(アトピー性皮膚炎ガイドライン2021)