皮膚科の豆知識ブログ

皮膚科専門医のブログです。日々の小さな疑問を解決する論文を紹介します。

はじめに

このブログについて

「皮膚科の豆知識」は皮膚科専門医が、日々感じた小さな疑問を解決する論文を紹介するブログです。

皮膚疾患は種類が多く大規模スタディーが行われていないため、皮膚科診療は経験に頼りがちになります。

そんな中で、なるべく具体的な数字に基づいた診療を行いたいと思ったことが、このブログを開設するきっかけになりました。

宜しくお願いします。

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単純ヘルペスが治るまでどれくらいかかる?

単純ヘルペスに対しては抗ウイルス薬を5日間投与するのが一般的です。

しかし内服終了時には、まだ治癒していない患者もいるようです。

それではどれくらいの期間で単純ヘルペスは治癒するのでしょうか。

 

5日間治療の効果

臨床試験の結果を見てみましょう。

546人の口唇ヘルペスあるいは性器ヘルペスの患者に、抗ウイルス薬(バルトレックスorファムビル)が投与されました。

臨床医薬. 29(3), 285, 2013

・痂疲化までの平均日数:4.0日
・治癒までの平均日数:6.0日

  

痂皮化まで平均4日、治癒までに平均6日かかっています。

内服終了時、痂皮化はしているが治癒していないという患者が多いようです。

 

1日治療の効果

また最近は高用量を1日だけ内服する短期間投与(PIT)も行われています。

こちらの効果についても論文を見てみましょう。

259人の再発性ヘルペスに対して短期間投与が行われました。

日臨皮会誌 35(3): 488, 2018 (NAID)130007411774

・痂疲化までの平均日数:4.0日
・治癒までの平均日数:4.7日

 

こちらも5日間治療と同じくらいの時間がかかるようです。

つまり治療は1日で終了しますが、すぐに治癒するわけではなく、その後数日かかるということです。

そのため効果をあまり実感できない人もいるようです。

 

まとめ

 

以前インフルエンザに対して1回で内服が終了するゾルフーザという薬剤が発売されました。

しかし内科の知り合いに聞くと、患者の満足度はあまり高くなかったそうです。

 

ゾルフーザはインフルエンザの罹患期間を半日から1日程度短縮します。

しかし内服が終了してから治癒するまでに2、3日かかります。その間に不安になって再び外来を受診する患者が多かったということでした。

 

短期間投与は、1日で治療が終了するというメリットが強調されていますが、患者の満足度は必ずしも高いとは言えません。

「治るまで飲みたい」という希望を言われることもあり、治療法の選択は慎重に行う必要がありそうです。

 

再発抑制療法はいつまで続けたらいいですか?

年6回以上再発する性器ヘルペスでは再発抑制療法が適応になります。

治療期間の目安は1年とされていて、添付文書には「本剤を1年間投与後、投与継続の必要性について検討することが推奨される」と記載されています。

それでは再発抑制療法を中止したらどうなるのでしょうか。

 

再発抑制療法を50日間行い、治療中と治療終了後のウイルス排泄量を調べた論文があります。

(J Infect Dis. 190(8): 1374, 2004 PMID: 15378428)

 

この報告によると、治療中はウイルス排泄量は減少しますが、抗ウイルス薬を中止すると、すぐに治療前の量に戻ってしまうようです。

 

基本的に再発抑制療法を中止すると、もとに戻ってしまうと考えたほうがよさそうです。

 

しかし1年以上治療をつづけると、予防効果が持続する可能性もあります。

アシクロビルを用いた再発抑制療法を2年間行った患者23人の、治療終了後の経過を見た論文があります。

臨床皮膚科 56(5): 118, 2002 (NAID)40020003736

【年間再発回数】

・治療前:11.1回
・治療終了後1年目:3.5回
・治療終了後2年目:3.3回
・治療終了後3年目:2.5回

 

このように2年間治療を行った場合、中止後も予防効果が持続しています。

治療継続は2年程度を目安にするとよいかもしれません。

 

「薬を飲んだら悪くなった」と言われないために

他院で治療を開始された帯状疱疹の患者が転院してくることがあります。

その理由は「薬を飲んだら悪くなった」から。

 

これは薬のせいで症状が悪化したわけではありません。

抗ウイルス薬の作用はウイルスの増殖抑制なので、効果発現までに時間がかかります。

そのため治療を開始しても、しばらくは症状が進行するのです。

 

それでは進行が止まるまでどれくらいの時間がかかるのでしょうか。

論文を見てみましょう。

帯状疱疹患者206人にバルトレックスを投与し、皮疹の進行が停止するまでの日数が調べられました。

J Dermatol. 44(11): 1219, 2017 PMID:28681394

【皮疹の進行停止率】

・投与開始日 0%
・1日後 20%
・2日後 44%
・3日後 89%

 

このデータからは、皮疹の進行が止まるまで2~3日かかるようです。

つまりその間は、治療をしていても症状が悪化します。

このことを患者に説明しておかなければ、薬で症状が悪化したと勘違いされてしまうので注意しましょう。

 

帯状疱疹の痛みが消えるまでどれくらいかかる?

帯状疱疹は皮膚症状が治癒した後も痛みが残ることが多いです。

それでは、どれくらいの期間痛みが続くのでしょうか。

論文を見てみましょう。

まず帯状疱疹患者316名に抗ウイルス薬を投与後、6ヶ月間フォローした研究です。

Int J Clin Pract. 61(7): 1223, 2007 PMID: 17362479

疼痛消失までの平均日数:35日

 

次に帯状疱疹患者721名に抗ウイルス薬を投与して、1年間フォローした研究です。

J Eur Acad Dermatol Venereol. 28(12): 1716, 2014 PMID: 25564680

疼痛消失までの平均日数:21日

 

これらの結果から、痛みは1ヶ月程度は続くと考えておいたほうがよいでしょう。

ただし10~20%の患者は3ヶ月以上痛みが続きます。

【痛みが3ヶ月以上続く患者】

①24.7%(Int J Clin Pract. 61(7): 1223, 2007)

②12.4%(J Eur Acad Dermatol Venereol. 28(12): 1716, 2014)

  

また年齢によって痛みが続く期間が違い、高齢になるほど長引くようです。

【疼痛消失までの平均日数】

50歳未満:16日
50歳以上:23日

 

高齢者では皮疹が治った後も痛みが長引くことを、あらかじめ説明しておいたほうがよいでしょう。