皮膚科の豆知識ブログ

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「誰も教えてくれなかった皮疹の診かた・考えかた」の第4刷が発行されました

この度、私の著書「誰も教えてくれなかった皮疹の診かた・考えかた」の第4刷が発行されました。

購入してくださった皆様ありがとうございました。

 

第○刷というのは増刷された回数を表しています。

最初に印刷した本が売り切れて、追加で印刷することを重版(増刷)と言います。

さらに増刷した本が売り切れた場合は、再び増刷されます。

(正確には売り切れそうになった段階で増刷が決定)

 

つまり第4刷とは、増刷分も売り切れて合計3回増刷されたということになります。

 

  • 第1刷:1月1日
  • 第2刷:3月15日(増刷1回目)
  • 第3刷:6月1日(増刷2回目)
  • 第4刷:9月1日(増刷3回目)

 

それでは増刷にはどんな意味合いがあるのでしょうか。

 

一般的にほとんどの書籍は増刷されずに販売終了してしまうそうです。

増刷率(重版率)はわずか10~20%と言われています。

したがって増刷が決まった時点で、その書籍はヒット作と言うことができるようです。

 

とはいえ執筆は今回が初めてということで、粗削りで未熟な点が多々あると思っています。

(現時点でも、価格と内容が釣り合っていない、5章がクソ、などの温かくも厳しいご意見をいただいております)

 

そこで読者の方々からの意見を取り入れた、完成度の高い完全版(改訂第2版)をいずれ出版できればと考えています。

 

それでは改訂第2版が出ている書籍はどれくらい増刷されているのでしょうか。

書店で調べてみました。

 

まず定番の教科書「あたらしい皮膚科学」を見てみます。

14刷発行後に改訂第2版が発行されているようです。

増刷13回…!桁が違いますね。

あたらしい皮膚科学

2005年5月:第1刷発行
2010年2月:第14刷発行
2011年4月:改訂第2版発行

 

ですがさすがに10刷以上は無理そうです。

別の本も見てみましょう。

最近改訂版が発売された「あらゆる診療科で役立つ皮膚科の薬」です。

こちらは4刷で改訂版が出ています。

あらゆる診療科で役立つ皮膚科の薬

2013年10月:第1刷発行
2018年5月:第4刷発行
2022年5月:改訂第2版発行

 

となると、このまま順調にいけば改訂版も夢ではなさそうです。

改訂版にむけて皆様からの感想やご意見をいただけましたら嬉しいです。

 

本の感想、ご意見はこちらからお願いします。

 

キズにゲンタシン軟膏を使うか?(油脂性基剤の選びかた)

潰瘍治療薬は剤型によって3つに分類するとわかりやすくなります。

  1. 油脂性基剤(水を保つ)
  2. 水溶性基剤(水を減らす)
  3. 乳剤性基剤(水を増やす)

 

創部の水分の状態に応じて薬剤を使い分けるのが創傷治療の原則です。

剤型別に外用薬の使いわけを解説したいと思います。

今回は油脂性基剤です。

 

油脂性基剤の製剤

 

油脂性基剤の製剤には様々なものがありますが、創面の保護と保湿効果を期待するなら主剤を含まない プロペトで十分です。

 

基剤

主剤

プロペト

ワセリン

なし

ゲンタシン軟膏

ワセリン

ゲンタマイシン

亜鉛華軟膏

ワセリン+ミツロウ

酸化亜鉛

アズノール軟膏

ワセリン

ジメチルイソプロピルアズレン

プロスタンディン軟膏

プラスチベース

アルプロスタジルアルファデクス

 

それではその他の製剤についてはどうでしょうか。

 

ゲンタシン軟膏

 

油脂性基剤のなかで最も使用されているのはゲンタシン軟膏で、一番なじみがある外用薬と言えるでしょう。

抗菌薬による創感染の予防効果を期待したいところです。

 

ところが手術創に対するワセリンと抗菌薬のランダム化比較試験では、感染率に有意差はなく、感染予防効果は乏しいようです。

JAMA. 276(12): 972, 1996 PMID: 8805732

術後感染発生率(術後4週間)

・ワセリン:2.0%
・抗菌薬:0.9%

両群間の差(95%CI):1.1%(-0.4 to 2.7%)

 

また長期使用による耐性菌の出現にも注意が必要です。

そのため褥瘡ガイドラインには、使用は短期間にとどめるように記載されています。

抗菌薬含有軟膏は油脂性基剤なので、創面の保護目的と感染の制御、予防目的で短期間の使用であれば用いてもよいが、長期使用により耐性菌の出現する可能性があるので注意を要する

(日本皮膚科学会雑誌 127(9), 1933, 2017 NAID: 130005996935)

 

「外来に常備してあるのがゲンタシン軟膏だけ」など選択せざるをえない状況は少なくありません。

しかし使用するとしても急性期の浅い傷に限り、短期間にとどめる必要があるでしょう。

 

慢性期の深い創傷に対しては、長期間の外用が必要になるため使用すべきでないと記載されています。

慢性性期の深い褥瘡に対して、抗菌薬含有軟膏を漫然と使用すると、耐性菌の出現する可能性があるため、基本的には用いるべきでない

(日本皮膚科学会雑誌 127(9), 1933, 2017 NAID: 130005996935)

 

亜鉛華軟膏、アズノール軟膏

 

亜鉛華軟膏とアズノール軟膏には、添加物としてそれぞれセスキオレイン酸ソルビタンとラノリンが含有されていて、油脂性基剤ながら吸水作用があります。

そのため多少浸軟した創面にも使用できますが、乾燥に注意が必要です。 

 

ユーパスタ、カデックス、ヨードコートの違い(水溶性基剤の選びかた)

潰瘍治療薬は剤型によって3つに分類するとわかりやすくなります。

  1. 油脂性基剤(水を保つ)
  2. 水溶性基剤(水を減らす)
  3. 乳剤性基剤(水を増やす)

 

創部の水分の状態に応じて薬剤を使い分けるのが創傷治療の原則です。

剤型別に外用薬の使いわけを解説したいと思います。

今回は水溶性基剤です。

 

水溶性基剤の種類

 

水溶性基剤の代表的な製剤は、ヨウ素を含んだユーパスタ、カデックス、ヨードコートです。

いずれも水溶性基剤で主剤はヨウ素ですが添加物が異なっています。

 

主剤

添加物

ユーパスタコーワ軟膏

ヨウ素

白糖

カデックス軟膏

ヨウ素

ポリマービーズ

ヨードコート軟膏

ヨウ素

CMC

 

これらにはどのような違いがあるのでしょうか。

 

ユーパスタ、カデックス、ヨードコートの違い

 

ユーパスタ、カデックス、ヨードコートを比較したデータを見てみましょう。

Int J Pharm. 394(1-2): 85, 2010 PMID: 20471462

 

抗菌力

まず殺菌性の指標となるヨウ素の放出能が一番高いのはカデックスです。

 

遊離ヨウ素濃度(mM)

ユーパスタ

0.11

ヨードコート

0.40

カデックス

1.20

 

またカデックスは持続的にヨウ素を放出するため、長時間抗菌能が維持されるとの報告もあります。

褥瘡会誌 11(4): 528, 2009

 

つまり抗菌力を重視するならカデックスがよいと言えます。

 

吸水力

 

次に吸水力を見てみると、一番高いのはユーパスタのようです 。

 

吸水量(mg/cm2/min0.5)

ユーパスタ

7.52

ヨードコート

1.98

カデックス

1.44

 

私は水溶性基剤を選択する際は、吸水力を重視してユーパスタを使用することが多いです。

またユーパスタに添加されている白糖には肉芽形成を促進する効果もあるようです。 

Therapeutic Research 23(8): 1625, 2002

 

ゲーベンとオルセノンの違い(乳剤性基剤の選びかた)

潰瘍治療薬は剤型によって3つに分類するとわかりやすくなります。

  1. 油脂性基剤(水を保つ)
  2. 水溶性基剤(水を減らす)
  3. 乳剤性基剤(水を増やす)

 

創部の水分の状態に応じて薬剤を使い分けるのが創傷治療の原則です。

剤型別に外用薬の使いわけを解説したいと思います。

今回は乳剤性基剤です。

 

乳剤性基剤の種類

 

乳剤性基剤には水中油型と油中水型の2つの種類があります。

 

 

水分含有率

水中油型

 

オルセノン軟膏

73%

ゲーベンクリーム

67%

油中水型

 

ソルコセリル軟膏

25%

リフラップ軟膏

21%

(褥瘡会誌 11(2): 92, 2009 NAID: 50007143964)

補水を目的とする場合、水分含有率が高い水中油型クリームであるゲーベンとオルセノンから選択するのがよいでしょう。 

(ソルコセリルとリフラップは発売中止)

 

それではゲーベンとオルセノンはどうやって使い分ければよいのでしょうか。

 

ゲーベンとオルセノンの違い

 

・ゲーベン(抗菌作用があるが、創治癒を遅らせる)

・オルセノン(抗菌作用はないが、創治癒を促進させる)

 

ゲーベンクリームには銀が含有されていて、細菌などの細胞膜、細胞壁に作用して幅広い抗菌力をもちます。

 

深い創傷で生じる壊死組織は感染の温床となります。

そのため壊死組織がある乾燥した創面の場合は、感染制御目的でゲーベンクリームが適しています。

また組織浸透性が高いため壊死組織の軟化、融解を促進することもできるというメリットもあります。 

 

ただし銀の細胞毒性が創傷治癒を遅らせるという欠点があります。

Recent findings indicate that the compound  delays  the  wound-healing  process and that silver may have serious cytotoxic activity on various host cells. 

(Burns. 33(2): 139, 2007 PMID: 17137719)

 

そのため浅い傷や細胞が活発に増殖している創面へは使用しないほうがよいでしょう。

 

一方、オルセノン軟膏は抗菌作用はありませんが、含有されているトレチノイントコフェリルが肉芽形成を促進します。

そのため壊死組織がない治癒傾向の創面に対してはオルセノンを使用します。