手足口病はエンテロウイルスの感染によって生じます。
原因ウイルスは多彩で、従来はコクサッキーA16型、エンテロ71型が多いとされてきました。
しかし近年は変化してきています。
国立感染症研究所が公開している原因ウイルスを見てみましょう。
IASR病原微生物検出情報
以下のように近年はコクサッキーA6型が多くなっています。
【最多の原因ウイルス】
・2018年 エンテロ71
・2019年 コクサッキーA6
・2020年 コクサッキーA16
・2021年 コクサッキーA6
・2022年 コクサッキーA6
・2023年 エンテロ71
それに伴って症状が変化しています。
コクサッキーA16、エンテロ71は手足に限局した皮疹が特徴でしたが、コクサッキーA6の皮疹は手足を超えて拡大する非典型例が多いようです。
エンテロウイルスは検査で同定することが難しいので、臨床症状のみから診断するしかありません。
そのため非典型的な皮疹がどのようなものかを理解しておく必要があります。
具体的にはどのような症状になるのでしょうか。
論文を見てみましょう。
非典型的な手足口病47例のデータをまとめた報告です。
Pediatr Dermatol. 33(4): 429, 2016、PMID: 27292085
この論文では非典型手足口病を3つの病型に分類しています。
非典型手足口病の病型
①Acral form:62%
②Diffuse form:15%
③Eczema coxsackium:23%
それぞれについて見てみます。
まずAcral formが最も多く、62%を占めています。
手足の病変に加えて、四肢と臀部、顔面に皮疹が拡大するのが特徴で、体幹部には皮疹はありません。
分布がGianotti症候群に似ていることから、Gianotti–Crosti-like formと呼ばれることもあるようです。
全例で顔面(口囲)の皮疹を認め、76%に臀部の皮疹が生じています。
そのため口囲と臀部に注目するのが診断のポイントとなりそうです。
Diffuse formは15%に見られる稀な病型で、体幹部まで病変が拡大するのが特徴です。
そのため水痘との鑑別が重要になります。
手足の病変も重度であり、重症型の皮疹と考えられています。
③Eczema coxsackium(カポジ水痘様発疹症型)
Eczema coxsackiumは特殊な病型で23%に見られます。
特徴は、湿疹が生じている部分に水疱やびらんが出現することです。
炎症による皮膚免疫能の低下が原因と考えられており、症状はカポジ水痘様発疹症と似ています。
そのためヘルペスによるEczema herpeticum(カポジ水痘様発疹症)に対して、Eczema coxsackiumと呼ばれています。
カポジ水痘様発疹症と同様に、アトピー性皮膚炎がリスクになる可能性があるようです。
まとめ
以上をまとめると、「ジアノッティ症候群」、「水痘」、「カポジ水痘様発疹症」を疑う皮疹を見たら非典型手足口病を考える必要があるようです。
基本的に手足に病変を認めるため、手掌、足底を確認するのが鑑別のポイントになりそうです。