皮膚科の豆知識

皮膚科専門医のブログです。日々の小さな疑問を解決する論文を紹介します

はじめに

「皮膚科の豆知識」は皮膚科専門医が、日々感じた小さな疑問を解決する論文を紹介するブログです。

皮膚疾患は種類が多く大規模スタディーが行われていないため、明確なエビデンスがある検査や治療は少ないようです。

そのため皮膚科診療は経験に頼りがちになります。

そんな中で、なるべく具体的な数字に基づいた診療を行いたいと思ったことが、このブログを開設するきっかけになりました。

宜しくお願いします。

 

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ジアノッティ症候群を診断する方法

ジアノッティ症候群は様々なウイルスが原因で起こります。 

 

そのため確定診断ができる検査がなく、患者への説明が中途半端になりがちです。

また治療法がなく、治癒までに時間もかかることも問題です。

 

そこで海外から報告されている診断基準が役に立ちます。

Infect Dis Rep 4(1): e12, 2012

【陽性所見】
・紅~褐色丘疹
・頬、臀部、前腕伸側、下肢伸側
・対称性
・10日以上持続

【陰性所見】
・広範な体幹病変
・鱗屑を伴う皮疹

 

四肢がメインで、皮疹は鱗屑がないことが特徴と言えるでしょう。

これを参考すれば多少は診療しやすくなるのではないかと思います。

いずれにせよ説明の難しい疾患です…。

 

成人パルボウイルス感染症を診断する方法

成人のパルボウイルス感染症に出会うことは意外と多いです。

そのほとんどが「あるかないか分からないくらいの皮疹と手足の腫れ、倦怠感」という症状。

臨床症状がパッとしないため、診断が難しい疾患です。

リウマチ因子や抗核抗体が陽性化することも、診断を迷わせる要因になります。

 

そんなとき診断基準が役に立ちます。

感染症学会誌 83: 45, 2009

1. 炎症反応低値
2. 短期間出現する皮疹(顔面は稀)
3. 四肢の関節痛、筋肉痛
4. 四肢の浮腫(特に指先)
5. 患児との接触
6. 感冒症状
7. 補体価正常~低値
8. リウマチ因子、抗核抗体陽性

 【①+その他3項目以上】⇒感度100%, 特異度88.9%

 

診断基準を満たす症例で抗体検査を行うようにすれば、無駄がないと思います。

 

また成人パルボウイルス感染症でやっかいなのは、症状消退まで時間がかかるということです。

感染症学会誌 83(1): 45, 2009

【症状消退までの期間】

・1週間以内:26.7%
・1~3週間:53.3%
・3週間以上:20.0%

 

倦怠感が3週間以上続くことがあります。

また感冒症状や関節痛が1ヶ月以上遷延した場合は、慢性疲労症候群の診断基準を満たします。

治療法のない疾患なので、あらかじめ臨床経過を説明しておかなければ「治療を何もしてもらってないし、治らない」と不信感を抱かれかねないため注意が必要です。

 

白癬は視診で診断するべからず

皮膚真菌症は見た目だけで診断できるのでしょうか。

それを調べた報告があります。

Fam Pract. 16(6): 611, 1999  PMID: 10625138

視診による皮膚真菌症の診断

・感度81%
・特異度45%
(陽性適中率:24%)

 

陽性的中率はわずか24%。視診で診断した症例の7割が真菌症ではなかったという結果になっています。

やはり直接鏡検は欠かせません。

 

特に足白癬と湿疹を見た目で区別するのは困難です。

「水虫」の主訴で受診する患者の約3割が足白癬ではなく、そのほとんどが湿疹だったという報告があります。

日本皮膚科学会雑誌105(3): 483, 1995

水虫を主訴に受診した患者の最終診断

・白癬:67.1%
・湿疹:24.5%
・その他:8.4%

 

このように白癬の診断には注意が必要です。

 

自覚症状がない足白癬に注意しよう

白癬はある程度まで菌が増殖しないと、痒みなどの自覚症状が出てきません。

そのため足白癬だと気がつかずに放置している患者が多く、クリニックや病院を受診するのは全患者の2割程度と推計されています。

(日本皮膚科学会雑誌125(12): 2289, 2015)

 

特に2型糖尿病患者は健常者と比べて足白癬の有病率が有意に高いようです。

Mycoses. 50 Suppl 2: 14, 2007 PMID: 17681049

【足白癬の有病率】

・健常人:38.0%
・2型糖尿病患者:52.7%

 

足白癬は糖尿病患者の細菌感染リスクを上昇させるため、積極的に治療を行う必要があります。

(Diabet Med, 26: 548, 2009 PMID: 19646196)