皮膚科の豆知識ブログ

日々の小さな疑問を解決する論文を紹介。講演、お仕事の依頼は「お問い合わせ」からお願いします。

創傷・手術

傷の治癒を促進する方法

傷の洗浄は一般的に行われていますが、周囲の皮膚に関してはあまり意識されていないことが多いです。 今回は傷の周囲の皮膚に関する論文を紹介します。 J Wound Care. 14(4): 169, 2005(PMID: 15835228) 褥瘡に対して周囲の皮膚を生食のみで洗浄した群と、…

外傷に抗菌薬は必要か?

以前、手術後の予防的抗菌薬の効果は証明されていないという論文を紹介しました。 それでは外傷の場合はどうでしょうか。 汚染のない外傷で抗菌薬の効果を調べたメタアナリシスを紹介します。 Am J Emerg Med 13(4): 396, 1995 (PMID: 7605521) 【創部感染発…

傷の培養検査で気をつけること

「傷を見たら培養をしろ」昔はそんなふうに習ったことがあるような気がします。 創部の培養はよく行われていますが注意が必要です。 傷が感染を起こしているのかは、創部培養で分かるのでしょうか。 非感染創の培養を行った研究を見てみましょう。 Med J Mal…

熱傷は何分間冷やせばいいのか?

熱傷で最も重要な処置は「冷却」と言われています。 しかし何分くらい冷やしたらいいかは教科書には書かれておらず、熱傷のガイドラインにも記載がありません。 そこで海外のガイドラインを調べてみると、オーストラリアのガイドラインに詳しい記載がありま…

熱傷にステロイド外用は効く?

受傷直後の熱傷に対して、炎症を抑制する目的でステロイド外用薬が使用されることがあります。 標準皮膚科学(第11版)には以下のような記載があります。 Ⅰ度熱傷:紅斑・疼痛が著しければ、ワセリン基剤のステロイド、消炎鎮痛薬を塗布する。 ステロイドは…

熱傷の水疱をどうするか?①ガイドライン

熱傷の水疱に対しては、どんな処置を行えばいいのでしょうか。 実は水疱の処置に関しては意見が分かれていて、統一した見解はないようようです。 国内と海外のガイドラインを見てみましょう。 まず日本熱傷学会のガイドラインです。 感染のリスクを考えなが…

熱傷の水疱をどうするか?②エキスパートオピニオン

熱傷の水疱を見たとき、どんな処置を行えばいいのでしょうか。 実は水疱の処置に関しては意見が分かれていて、統一した見解はないようようです。 前回の記事ではガイドラインを確認しました。 www.derma-derma.net 今回はエキスパートオピニオンを見てみまし…

熱傷はいつ手術するのか?

熱傷の手術については、あまり習うことがない気がします。 深達度によってⅠ~Ⅲ度に分類されていますが、受傷直後に正確に診断するのは困難です。 壊死組織が分界され範囲がはっきりするのは受傷後10日~2週間後になります。 この2週間が基準になり、早期手術と…

手術器具の使い分け(セーレ編)

セーレには様々な種類がありますが、どんな違いがあってどう使い分けるのか、初心者には分かりにくいと思います。 そこで2つのポイントからまとめてみました。 まず刃が曲がっているか、まっすぐかの違いです。 ・曲→組織を切るセーレ・直→糸を切るセーレ 曲…

真皮縫合を行う理由は?

皮膚科、形成外科では真皮縫合がよく行われます。 真皮縫合にはどのような利点があるのでしょうか。 術後瘢痕に対する真皮縫合の効果を調べた報告があります。 Br J Plast Surg. 42(1): 74, 1989 PMID: 2537125 45人の腕のタトゥーを2カ所切除し、1カ所は真…

合成吸収糸の種類と違い(バイクリル、モノクリル、PDS)

手術の時に使用する吸収糸にはいろいろな種類があります。 しかしバイクリルとPDSの違いなど、それぞれの特徴について解説してある教科書はあまり多くありません。 具体的にはどのような違いがあるのでしょうか。 PDS、バイクリル、モノクリルの違いと使い分…

術後瘢痕を予防する方法

術後に肥厚性瘢痕を予防する方法としてテープ固定が行われています。 (3M マイクロポア スキントーン サージカルテープ) はたてしてテープ固定にエビデンスはあるのでしょうか。 動物の傷で術後瘢痕の程度を調べた報告を紹介します。 無処置40例、テープ固定…

局所麻酔薬の使い分け(キシロカインとカルボカインの違い)

日常的に使用される局所麻酔薬にキシロカインとカルボカインがあります。 キシロカインとカルボカインにはどのような違いがあるのでしょうか。 麻酔薬の総説から考えてみます(PEPARS 127: p1, 2017)。 効果の強さ まず麻酔薬の強さに関わるのが分配係数で…

エピネフリン入り局所麻酔の効果

皮膚科の手術ではエピネフリン入りの局所麻酔を使用します。 エピネフリンには血管収縮作用があり、2つの効果があると言われています。 ①麻酔薬の吸収が緩徐になるため作用時間と極量が増える ②術中の出血を減らす これにはエビデンスがあるのでしょうか。 …

術後の創部保護は必要か?

術後はガーゼや被覆材で創部を保護するのが一般的です。 しかし創部の保護は本当に必要なのでしょうか。 2つの論文を紹介します。 術後感染 まずは術後感染に関する報告です。 Br J Surg. 76(2): 204, 1989(PMID: 2702460) 抜糸まで創部の保護を続けた633…

皮膚科手術の術後合併症の発生頻度はどれくらい?

術後合併症の代表的なものは感染と血腫です。 皮膚科手術でも、ときどき術後感染や血腫を起こすことがあります。 それでは術後合併症の発生頻度はどれくらいなのでしょうか。 論文を見てみましょう。 J Hosp Infect. 65(3): 258, 2007(PMID: 17244515) 皮膚…

術後の抗菌薬は必要か?

最近は術後の予防的抗菌薬は不要というのがトレンドです。 胃癌手術(準清潔手術)では、抗菌薬投与群の術後感染発症率は未投与群と同等であったというデータがあります。 Br J Surg 94(6): 683,2007(PMID: 17514671) 【創部感染発症率(胃癌手術)】 ・術…

超高齢者に局所麻酔手術は可能か?

高齢化に伴って皮膚癌患者は増加しており、90歳を超える患者をみることも多くなりました。 超高齢者に対する全身麻酔や侵襲が高い手術はリスクが高く、慎重な判断が必要です。 それでは局所麻酔の手術はどうなのでしょうか。 論文を紹介します。 Int J Derma…