皮膚科の豆知識ブログ

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小児のアトピー性皮膚炎はどれくらい治癒する?

「子どものアトピーは自然に治る」と言われますが、これは本当なのでしょうか。

論文を見てみましょう。

Br J Dermatol. 170(1): 130, 2014 PMID: 23980909

 

台湾で行われた、生後2歳までに発症したアトピー性皮膚炎の小児1404人の調査です。

10歳まで皮膚炎の経過が追跡されています。

【アトピー性皮膚炎の経過】

・10歳までに改善:69.8%
・10歳以降も継続:30.2%

 

このように10歳までに7割が改善しており、子どものアトピーの多くが自然に治ると考えてよいでしょう。

ただし3割の患者は10歳以降も症状が持続しています。

これらの小児は大人になっても症状が持続する可能性が高く注意が必要です。

 

高齢者にアトピー性皮膚炎はあるのか?

従来、アトピー性皮膚炎は小児の疾患と考えられていました。

1970年代のデータを見ると、成人の割合は10%程度です。

【アトピー患者の年齢(1976年)】

・9歳以下:68%
・10~19歳:19%
・20~29歳:7%
・30歳以上:6%

Asia Pac Allergy. 1(2): 64, 2011

 

しかし近年は成人の患者も増加しています。

1990年代の調査では成人の割合が50%以上になっています。

【アトピー患者の年齢(1996年)】

・9歳以下:23%
・10~19歳:22%
・20~29歳:39%
・30歳以上:16%

J Dermatol. 41(3): 200, 2014 PMID: 24628069

 

さらに高齢化に伴い、高齢者のアトピー性皮膚炎も増加しています。

2007年の調査では60歳以上の患者が3%程度いるようです。

【アトピー患者の年齢(2007年)】

・30歳以上:36%
・50歳以上:6%
・60歳以上:3%

J Dermatol. 41(3): 200, 2014 PMID: 24628069

 

これらの高齢患者は、成人アトピーが持続したものなのでしょうか。

論文を見てみましょう。

Int Arch Allergy Immunol. 157(4): 372, 2012 PMID: 22122980

60歳以上のアトピー患者121人の調査です。

以下のように高齢になってから症状が出現している患者がほとんどのようです。

・高齢発症:88%(小児アトピーの再発:67%)
・成人発症の持続:12%

 

多くが小児アトピーの再発のようですが、既往がない患者も20%を占めています。

高齢で発症するアトピーもあるということを知っておく必要があるでしょう。

 

接触皮膚炎の原因物質は何が多い?

日常診療で接触皮膚炎に遭遇する頻度は高いですが、原因は何が多いのでしょうか。

日本接触皮膚炎研究班が行った疫学調査を見てみましょう。

日本皮膚科学会雑誌 130 (4), 523-567 NAID: 130007833597

 

パッチテストで原因が判明した接触皮膚炎423例のまとめです。

1. 化粧品・薬用化粧品:54%
2. 医薬品:25%
3. 装身具・装飾品:9%

 

このように原因のほとんどが化粧品と医薬品のようです。

さらに化粧品・薬用化粧品の内訳を見てみましょう。

1. 化粧品:38 %
(化粧下地、化粧水、美容液、フェイスクリーム、ファンデーション、乳液)    
2. 染毛剤:13%
3. シャンプー:12%
4. その他:37%

 

まず最初に疑うのが化粧品。

それ以外に注意が必要なのは染毛剤やシャンプーのようです。

 

染毛剤の接触皮膚炎が起きるまでの期間

染毛剤の接触皮膚炎は比較的遭遇することが多い疾患です。

「今までは大丈夫だった」と言われることが多い印象がありますが、感作までにはどれくらいの時間がかかるのでしょうか。

論文を紹介します。

日皮会誌:106 (11),1397, 1996

 

パラフェニレンジアミンのパッチテスト陽性患者39人の調査です。

ヘアダイ使用開始後、症状発現までの期間がまとめられています。

<使用開始から症状発現までの期間>

・~半年:4%
・半年~1年:13%
・1年~5年:25%
・5年~:58%

 

このように半数以上が症状出現までに5年以上かかっています。

症状が出るまでにかなりの時間がかかるのが一般的なようです。

 

湿布の光接触皮膚炎はいつまで続く?

NSAIDsの一種であるケトプロフェンには光線過敏の副作用があります。

そのためケトプロフェンが含有された湿布(モーラステープ)は光接触皮膚炎を引き起こすことがあります。

 

さらに薬の成分は湿布をはがした後でも長く皮膚に残ります。

光接触皮膚炎を起こした患者は、一定期間紫外線を避ける必要があるのです。

 

それではどれくらいの期間紫外線を避ければよいのでしょうか。

論文を紹介します。

Contact Dermatitis. 58(3): 159, 2008 PMID: 18279154

 

ケトプロフェンの光接触皮膚炎の患者40人へのインタビュー調査です。症状が消退するまでの期間がまとめられています。

光線過敏消失までの期間

・2か月以内:12人(30%)
・2ヶ月~1年:15人(37%)
・1年以上:13人(33%)

 

このように7割の患者が症状消失までに2ヶ月以上かかっています。

できれば1年程度の遮光をするのが望ましいのかもしれません。