皮膚科の豆知識ブログ

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抗核抗体が陽性だけど症状がないとき

抗核抗体が陽性、しかし臨床症状は無いという状況に遭遇することがあります。

健常者での抗核抗体の陽性率はどれくらいなのでしょうか。

Arthritis Rheum. 40(9): 1601, 1997(PMID: 9324014)

 

健常人120人に対して抗核抗体の検査が行われています。

【健常者の抗核抗体陽性率】

・陰性:68%
・陽性:32%

(40倍以上:32%、80倍以上:13%、160倍以上:5%、320倍以上:3%)

 

以上のように抗核抗体は健常者でも陽性になることがあるため、判断はなかなか難しいです。

そのため有意な上昇は160倍以上とされています。

 

しかしその所見はSLEの発症を予見するものかもしれません。

SLEの初期は抗核抗体のみ陽性になり、その後に特異抗体が検出されるようになるそうです。

N Engl J Med. 349(16): 1526, 2003

①抗核抗体陽性(2年前)

②dsDNA抗体陽性(1年前)

③Sm抗体陽性(半年前)

④発症

 

とはいえ抗核抗体の判断には悩むことが多いです。

臨床症状がない患者に抗核抗体をオーダーすることは控えたほうがいいでしょう。