皮膚科の豆知識ブログ

日々の小さな疑問を解決する論文を紹介。講演、お仕事の依頼は「お問い合わせ」からお願いします。

マイコプラズマ抗体検査はどう使う?

マイコプラズマ(マイコプラズマ・ニューモニエ)感染症はスティーブンスジョンソン症候群の原因にもなるため、皮膚科でも重要な感染症です。

肺炎のイメージが強いですが、肺炎に至るのは3~10%で、ほとんどが感冒症状のみなのだそうです(Chest. 95(3) 639, 1989 PMID:2646077)。

そのため皮疹の原因をつきとめるためには、抗体検査が必要になる場合があります。

しかし抗体検査にはいろいろな種類があり、使い分けや判定法などを知っておかなければなりません。

 

まず抗体検査にはCF法とPA法の2種類があります。

  1. CF法(主にIgG)
  2. PA法(主にIgM)

CF法とPA法はIgMとIgGの両方を反映した抗体検査ですが、CF法は主にIgGを、PA法は主にIgMを調べています。

そのため現時点での感染を知るためには、PA法のほうが良いようです。

 

それではPA法の感度・特異度はどれくらいなのでしょうか。

Clin Vaccine Immunol. 13(6): 708, 2006(PMID: 16760332)

・40倍:感度89.4%、特異度83.7%(陽性尤度比5.56)

・320倍:感度56.1%、特異度 97.4%(陽性尤度比18.7)

 

抗体陽性(40倍)だけでは特異度が低く、診断確定は難しそうです。

診断基準では320倍以上の数値が必要とされています。

 

またPA法は主にIgMを測定していますが、IgGも一部含まれているため、ペア血清での診断も可能です。

・ペア血清4倍以上:感度 88.5%、特異度100%

 

可能であればペア血清での診断が望ましいでしょう。