今回は医師国家試験に出題された皮膚疾患の写真から、皮膚科診断について解説したいと思います。
医師国家試験皮膚科領域の解説
国試の皮膚科の分野では症例写真が数多く出てきますが、写真から診断することは難しいのではないでしょうか。
過去問の写真を丸暗記するか、問題文から疾患を推測するか。
合格のためにはそれで十分だと思います。
しかしせっかくなので、将来臨床で役立つ皮疹のみかたを勉強してみてはいかがでしょうか。
まず以下の2つの写真をみてください。診断はわかるでしょうか。
これらの紅斑の違いは皮疹の表面の性状です。
よく見ると、Aは表面がツルツルしていて、Bは表面がザラザラしているのがわかると思います。
答えはAが薬疹、Bが湿疹です。
組織学的な皮疹のみかた
この違いが皮膚科診断では非常に重要になります。
それではなぜこのような違いがあるのでしょうか。
少し病理組織学的に考えてみましょう。
皮膚は3層構造になっています。
外側から表皮、真皮、皮下組織です。
表面がザラザラしているのは、一番外側の表皮に病変があることを表しています。
一方表面がツルツルしているのは、病変が表皮にはなく、真皮のみに存在していることを表しています。
つまり表面の性状から病変が存在する深さが分かるということです。
さらにこの深さの違いがなぜ起こるのかを考えてみましょう。
接触皮膚炎などの湿疹は、原因物質が体の外からやってきます(外因性)。
そのため皮膚の外側の表皮に病変が生じます。だから表面がザラザラしています。
一方薬疹は、摂取された原因物質が体の中からやってきます(内因性)。
そのため皮膚の内側の真皮から病変が生じます。だから表面はツルツルです。
つまり病変の深さがわかれば、皮疹の原因を推測することができるのです。
まとめと復習
もう一度最初の写真を見てみましょう。
表面がツルツルしているAは真皮に病変があり、原因物質は体の中からやってきたと考えられます。この場合は、まず薬疹を考えます。
表面がザラザラしているBは表皮に病変があり、原因物質は体の外からやってきたと考えられます。この場合は、まず湿疹を考えます。
それでは次の写真で練習してみてください。どちらが湿疹で、どちらが薬疹かわかるでしょうか。
答えは
A:薬疹、B:湿疹です。
いかがでしょうか。
例外も多いのですが、まずこの原則を覚えておけば、皮膚科診断がわかりやすくなると思います。
・表面がザラザラ→表皮の病変(湿疹)
・表面がツルツル→真皮の病変(薬疹)
これからこの原則を使って、他の疾患についても解説していきます。
つづく