皮膚科の豆知識ブログ

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膿痂疹は培養検査で診断できる?

「細菌培養が陽性なので膿痂疹と診断したが、抗菌薬が効かない」という相談を受けることがあります。

これは診断が間違っているパターンがほとんどです。

膿痂疹の診断は培養検査ではできないからです。

 

湿疹などのびらん面には、黄色ブドウ球菌をはじめとする様々な細菌が定着しています。

そのため湿疹から細菌培養を行うと、高い確率で定着菌が検出されます。

 

湿疹患者14例の病変から細菌培養を行った論文を見てみましょう。

西日本皮膚科 46(5): 1193, 1984

 

培養陽性率は以下の通りです。

細菌培養陽性率:71%

 

その後ステロイド外用のみで細菌は陰性化したようです。

つまり培養検査で細菌が検出されても、感染を起こしているとは限らないということです。

 

湿疹病変に対して抗菌薬の外用を行うと、細菌が検出されなくなりますが湿疹は悪化します。

逆にステロイドの外用を行うと湿疹が良くなり、そこに定着していた細菌は自然に消失します。

細菌が分離された場合、それが感染か定着かを鑑別することが大切なのです。

 

しかし現実的には、湿疹を掻きむしってできたびらん面なのか、それとも膿痂疹のよってできたびらん面なのか区別がつかない症例も多いです。

 

さらに湿疹と膿痂疹が合併している場合もあります。

伝染性膿痂疹患者75人の検討では18人(24%)が湿疹を合併していたようです。

皮膚科の臨床 49(5), 587, 2007 NAID: 40015474220

 

合併しているときや、どうしても区別ができないときは両方の治療を同時に行います。

湿疹をステロイド外用で治療して、膿痂疹を抗菌薬内服で治療するのがいいでしょう。