前回の記事では、蜂窩織炎に対しては第1世代のセファロスポリン系抗菌薬を使用すると解説しました。
それでは、それ以外の抗菌薬を選択するのはどんな状況なのでしょうか。
海外のガイドラインを見てみてみましょう。
動物・ヒト咬傷
動物咬傷やヒト咬傷で感染の原因となるのはPasteurella multocidaや嫌気性菌(Eikenella corrodensなど)です。
これらの菌には第1世代セファロスポリンは効果が乏しく使用できません。
そのため米国感染症学会(IDSA)のガイドラインでは、βラクタマーゼ配合ペニシリン(アモキシシリン/クラブラン酸)が推奨されています。
Clin Infect Dis. 59(2): e10, 2014 PMID: 24973422
Based on this bacteriology, amoxicillin-clavulanate is appropriate oral therapy that covers the most likely aerobes and anaerobes found in bite wounds.
糖尿病性潰瘍
次に糖尿病性足感染症のIDSAガイドラインを見てみましょう。
Clin Infect Dis. 54(12): e132, 2012 PMID: 22619242
軽症の感染症ではグラム陽性球菌のみのカバーでよいようです。
The majority of mild, and many moderate, infections can be treated with agents that have a relatively narrow spectrum, usually covering only aerobic GPC.
一方、中等症~重症の患者ではグラム陽性球菌、グラム陰性桿菌、嫌気性菌の混合感染が多く、広域スペクトラムの抗菌薬が推奨されています。
For severe infections, and for more extensive, chronic moderate infections, it is safest to promptly commence therapy with a broad-spectrum regimen.
The agent(s) should have activity against GPC, as well as common gram-negative and obligate anaerobic organisms to ensure adequate tissue concentrations.
具体的には軽症ではセファレキシン、アモキシシリン/クラブラン酸。
中等症以上ではアンピシリン/スルバクタムが推奨されています。
まとめ
蜂窩織炎では基本的に第1世代セファロスポリンを使用します。
しかし動物・人咬症や糖尿病に伴う蜂窩織炎の場合は、第1世代セファロスポリン以外の抗菌薬を使用することを理解しておく必要があるでしょう。