皮膚科の豆知識ブログ

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蕁麻疹が治りませんと言われたら

「蕁麻疹が治らない」といって転院してくる患者は、2つのパターンに分けられます。

 

  1. 難治性の蕁麻疹
  2. 内服が不十分

 

もちろん難治性の蕁麻疹の可能性はありますが、内服が不十分な場合もあることに注意が必要です。

 

皮疹が出現したときだけ間欠的に内服している患者は多いようです。

しかし内服で症状は消失しても中止すると再燃してしまいます。

つまり「薬を飲むと引くが止めると出る」状態を、患者が「治らない」表現していることがあるのです。

 

そのため症状が消失した後も、しばらく予防的に内服を続ける方がいいと言われています。

 

予防内服の効果

予防内服の効果を調べた論文を見てみましょう。

皮膚アレルギーフロンティア 5(3): 194, 2007

 

抗ヒスタミン薬で症状が消失した慢性蕁麻疹患者75人に対して、37人はすぐに内服中止、38人は1ヶ月間内服を継続してから中止しました。

そしてその後の再発率が調査されています。

慢性蕁麻疹の再発率

・症状消失後すぐに内服中止:92%
・症状消失後も1ヶ月内服して中止:34%

 

このように内服をすぐに中止するよりも、しばらく予防内服を行ってから中止した方が再発は少ないようです。

症状が出現しなくなっても内服を継続したほうがいいと、あらかじめ患者に伝えておくのがよいでしょう。

 

予防内服の期間

それでは予防内服はどれくらいの期間行ったらよいのでしょうか。

予防内服の期間については明確なエビデンスはありませんが、日本皮膚科学会のガイドラインでは以下のような目安が示されています。

日本皮膚科学会雑誌 128(12):  2503, 2018 NAID: 130007520783

 

推奨される予防内服期間

急性蕁麻疹

数日~1週間

慢性蕁麻疹

発症後2か月以上

1ヶ月

発症後2か月以内

2ヶ月

 

また急性蕁麻疹では予防内服後すぐに内服を終了してもよいですが、慢性蕁麻疹ではすぐに終了せずに段階的に減量を行っていくのが望ましいと言われています。

具体的には1日あたりの内服量を減量、または内服の間隔をあけます。

3日に1度程度内服することで症状が出現しない状態まで改善したら内服を中止してよいでしょう。