皮膚科の豆知識ブログ

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ゲーベンとオルセノンの違い(乳剤性基剤の選びかた)

潰瘍治療薬は剤型によって3つに分類するとわかりやすくなります。

  1. 油脂性基剤(水を保つ)
  2. 水溶性基剤(水を減らす)
  3. 乳剤性基剤(水を増やす)

 

創部の水分の状態に応じて薬剤を使い分けるのが創傷治療の原則です。

剤型別に外用薬の使いわけを解説したいと思います。

今回は乳剤性基剤です。

 

乳剤性基剤の種類

 

乳剤性基剤には水中油型と油中水型の2つの種類があります。

 

 

水分含有率

水中油型

 

オルセノン軟膏

73%

ゲーベンクリーム

67%

油中水型

 

ソルコセリル軟膏

25%

リフラップ軟膏

21%

(褥瘡会誌 11(2): 92, 2009 NAID: 50007143964)

補水を目的とする場合、水分含有率が高い水中油型クリームであるゲーベンとオルセノンから選択するのがよいでしょう。 

(ソルコセリルとリフラップは発売中止)

 

それではゲーベンとオルセノンはどうやって使い分ければよいのでしょうか。

 

ゲーベンとオルセノンの違い

 

・ゲーベン(抗菌作用があるが、創治癒を遅らせる)

・オルセノン(抗菌作用はないが、創治癒を促進させる)

 

ゲーベンクリームには銀が含有されていて、細菌などの細胞膜、細胞壁に作用して幅広い抗菌力をもちます。

 

深い創傷で生じる壊死組織は感染の温床となります。

そのため壊死組織がある乾燥した創面の場合は、感染制御目的でゲーベンクリームが適しています。

また組織浸透性が高いため壊死組織の軟化、融解を促進することもできるというメリットもあります。 

 

ただし銀の細胞毒性が創傷治癒を遅らせるという欠点があります。

Recent findings indicate that the compound  delays  the  wound-healing  process and that silver may have serious cytotoxic activity on various host cells. 

(Burns. 33(2): 139, 2007 PMID: 17137719)

 

そのため浅い傷や細胞が活発に増殖している創面へは使用しないほうがよいでしょう。

 

一方、オルセノン軟膏は抗菌作用はありませんが、含有されているトレチノイントコフェリルが肉芽形成を促進します。

そのため壊死組織がない治癒傾向の創面に対してはオルセノンを使用します。