保湿剤とステロイド外用薬を併用する状況は多いです。
そんなときに気になるのが「どちらを先に塗ればいいのか」。
先に保湿剤を塗ってしまうと、後で塗るステロイドの吸収率が低下するような気もします。
しかし保湿剤を後で塗ると、最初に塗ったステロイドが周りに広がってしまうのでよくないかもしれません。
そこで塗る順番について参考になる論文を紹介します。
①皮膚へのステロイド移行性
まず皮膚へのステロイドの移行性を調べた論文です。
西日本皮膚科 73(3): 248, 2011 NAID: 130004831795
健常人の前腕3か所にステロイドと保湿剤の外用が行われました(①ステロイドのみ、②ステロイドの後に保湿剤、③保湿剤の後にステロイド)。
そして外用3時間後に分光度計を用いて、皮膚内のステロイド含有量が調べられています。
皮膚表面(0μm)や浅い部位(2~4μm)では、先に保湿剤を塗った群で皮膚内へのステロイドの移行性が低くなっています。
しかし6μmの深さでは順番による差はないようです。
(D群:ステロイドのみ、E群:ステロイドの後に保湿剤、F群:保湿剤の後にステロイド)
角層の厚さは10~20μmなので、保湿剤とステロイドを塗る順番は臨床効果には差を及ぼさないと考えられます。
(またステロイドのみでは移行性が高いようですが、その差はごくわずかなので臨床的な差はないだろうと考察されています)
②臨床効果
次に臨床効果を調べた論文も見てみましょう。
Pediatr Dermatol. 33(2): 160, 2016 PMID: 26856694
アトピー性皮膚炎の小児46人に対して、26人は保湿剤→ステロイド、20人はステロイド→保湿剤の順番で外用が行われました。
そして2週間後の重症度スコアが調査されています。
【重症度(EASI)スコア】
・保湿剤→ステロイド:4.6(2.7-11.5)
・ステロイド→保湿剤:10.4(4.9-16.1)
(p=0.11)
このように重症度スコアには有意差はなく、どの順番で塗っても臨床的な有効性は変わらないようです。
どちらでもよさそうですが、私は先に広めに保湿剤を塗ってから、病変の部位にステロイド外用薬を塗るように指示しています。