オイラックスという外用薬があります。
この薬剤にはどのような効果があるのでしょうか。
オイラックスの成分であるクロタミトンは、1940年代に疥癬に対する殺虫剤として開発されました。
しかしその後に痒みに対する効果が分かり、鎮痒性外用薬としても使用されるようになったようです。
つまり以下の2つの作用があるということです。
- 殺虫効果
- 鎮痒効果
前回は殺虫効果について解説しました。
今回は鎮痒効果について見てみます。
薬理作用
なぜクロタミトンが痒みに効くのかはよくわかっていないようです。
添付文書を見てみると以下のように記載されています。
一般には、皮膚に軽い灼熱感を与え、温覚に対するこの刺激が競合的にそう痒感を消失させるといわれている
また近年、神経のイオンチャネル(TRPV4)をブロックして痒みを抑えるのではないかという論文が出ています。
Pflugers Arch. 469(10): 1313, 2017 PMID: 28612138
いずれにせよ何らかの神経に対する作用があるようです。
となるとクロタミトンは痒みを抑えるだけで、皮膚炎を改善する効果はないと考えられます。
皮膚炎に対する効果
動物実験の論文を見てみましょう。
皮膚炎を起こしたウサギに対して、①クロタミトン+ステロイド(ヒドロコルチゾン)、②クロタミトンの2種類の外用薬が使用されました。
そして発赤が改善するまでの日数が調査されています。
発赤が改善するまでの日数
①クロタミトン+ステロイド:7日
②クロタミトン:11日
③無処置:11日
クロタミトンは無処置と差がなく、クロタミトンのみでは明らかな皮膚炎の改善効果はないようです。
痒みに対する効果
次にクロタミトンの痒みに対する効果について見てみましょう。
Int J Dermatol. 23(10): 684, 1984. MID: 6396248
痒みを伴う皮膚疾患患者31人(アトピー性皮膚炎9人、虫刺症22人)の二重盲検試験です。
体の片側にプラセボ、もう片側にクロタミトンローションを塗布し、かゆみスコアが調査されました。
この結果はクロタミトンとプラセボの間に有意な差はありません。
また患者の評価でも大きな差は認められなかったようです。
患者の評価
・クロタミトンが有効:52%
・プラセボが有効:42%
・違いはない:6%
この論文ではクロタミトンに痒みを抑制する効果はないという結論になっています。
まとめ
今回はオイラックスについてまとめてみました。
皮膚炎の改善効果はありませんが、神経に直接作用して痒みを抑制する薬剤です。
しかしその効果についてはエビデンスが乏しい状況と言えそうです。
治療抵抗性の痒みに対してダメ元で処方する薬剤という位置づけになるのかもしれません。