皮膚科の豆知識ブログ

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皮膚の抗酸菌培養の注意点

非結核性抗酸菌症と言えば呼吸器感染症というイメージですが、皮膚感染症にも出会うことがあります。

呼吸器と皮膚ではどのような違いがあるのでしょうか。

文献を調べてみました。

 

原因菌

呼吸器感染症の原因菌は何が多いのでしょうか。

Emerg Infect Dis. 2016 Jun;22(6):1116-7. PMID: 27191735

 

以下のように約9割はMACのようです。

呼吸器非結核性抗酸菌症の原因菌

1. MAC:89%
2. M. kansaii:4%
3. M. abscessus:3%

 

一方、皮膚ではどうでしょうか。

日本皮膚科学会雑誌. 126(12): 2289, 2016

 

このようにMACは少なくM. marinum、M. fortuitumが多いようです。

皮膚非結核性抗酸菌症の原因菌

1. M. marinum:64%
2. M. fortuitum:10%
3. MAC:8%

 

培養温度

それではこの違いを踏まえて、どのような点に注意が必要か考えてみましょう。

Am J Respir Crit Care Med. 175(4): 367, 2007. PMID: 17277290

 

MACの至適発育温度は35~37℃と言われています。そのため抗酸菌の培養は一般的に37℃で行われます。

Most clinically significant slowly growing mycobacteria grow well on primary isolation at 35° to 37°C.

 

ところがM. marinumやM. fortuitumの至適発育温度は28~30℃です。

Cultures for RGM (rapidly growing mycobacteria) and M. marinum should be incubated at 28° to 30°C.

 

つまり通常の抗酸菌培養の条件ではM. marinumやM. fortuitum発育しないのです。

そのため皮膚の培養検査では30℃と37℃の2つの条件での検査が推奨されています。

All skin, joint fluid, and bone specimens should be cultured at 28° to 30°C and at 35° to 37°C.

 

まとめ

皮膚の非結核性抗酸菌症は呼吸器と原因菌が異なります。

そのため検査を提出する際は30℃での培養を依頼する必要があるようです。