皮膚科の豆知識ブログ

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蕁麻疹の病歴聴取のコツ/著書「誰も教えてくれなかった皮疹の診かた・考えかた」の補足説明➁

拙著「誰も教えてくれなかった皮疹の診かた・考えかた」には、いくつかわかりにくい部分があったようです。

そこで、このブログで読者の疑問に対して解答していきたいと思います。

前回は真菌検査について解説しました。

www.derma-derma.net

 

今回は蕁麻疹についてです。

 

蕁麻疹の診断法

 

表面がツルツルで境界が明瞭な紅斑は、蕁麻疹と中毒疹に分類する必要があります。

 

  • 蕁麻疹:マスト細胞性の反応
  • 中毒疹:T細胞性の反応

 

見た目だけでは区別できないことも多いですが、蕁麻疹には個々の皮疹が24時間以内(通常は数時間)で消退するという特徴があります。

つまり「皮疹が短時間で消退する」ことがわかれば蕁麻疹と考えてよいわけですね。

 

ここでこんな質問をいただきました。

 

数時間待たないとわからないなら、その場では診断できないのですか?

 

確かに見た目だけではその場で診断はできません。そこで重要になるのが病歴です。

つまり病歴から短時間で消退することを確認できればいいわけですね。

したがってこの病歴の聴取が診断の最大のヤマとなります。

 

病歴聴取のコツ

 

ところが患者に「すぐに消えますか?」や「短い時間で治りますか?」と聞くと、大抵の場合「No」と答えます。

その理由は、数時間以内に消えるのは「個々の皮疹」であって「すべての皮疹」ではないからです。

 

わかりにくいかもしれませんので図で説明したいと思います。

図のように個々の皮疹は数時間で消えてしまいますが、また別の場所に出現するため皮疹はずっと出ています。

つまり数時間以内に治癒するわけではないのですね。

 

したがって「すぐに消えますか?」や「短い時間で治りますか?」という聞き方では区別できず、質問を工夫する必要があるわけです。

私は「形が変わりますか?」や「場所が変わりますか?」、「出たり引いたりしますか?」などと聞くようにしています。

 

次回は蜂窩織炎について補足説明します。

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